スポーツ栄養講座⑤(高校生編) スポーツを頑張る高校生にとって大切なこと(1)

スポーツ栄養講座5回目のテーマは『スポーツを頑張る高校生にとって大切なこと(1)』です。
スポーツを頑張る高校生のための食事のとり方やその注意点について解説します。

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※記事中の関連図表は動画内で参照できます。記事と動画、合わせてご覧ください。


●スポーツを頑張るために必要なエネルギー量を知っておこう

これまでの講座で示してきたエネルギー摂取量は、食事摂取基準(厚生労働省)に基づいたもので、あくまで一般的な数値になります。高校生年代に入り、練習やトレーニング量が増えて成長が進んで筋肉量も増えてくると、必然的にエネルギーの必要量も多くなってきます。

ですから、すでに成長期に入った、または成長が進んでいる高校生たちは、一般的な数値ではなく、よりスポーツに特化した数値を知る必要があります。スポーツ選手向けの推定エネルギー必要量を求める計算式がありますので、自分の競技特性や体格などを把握し、日々の練習、食事に役立てましょう。

以下、スポーツ選手の推定エネルギー必要量の計算式です。

28.5×除脂肪体重(LBM×種目分類別身体活動レベル(PAL

LBM = 体重-(体重-(体脂肪率÷100))

除脂肪体重(LBM)とはその名の通り、体の脂肪分を除いた筋肉・体水分(血液含む)・骨などを合わせた重量のことです。LBMを求めるためには体脂肪率の値が必要になりますが、すでに学校やチームで定期的に測定してわかっている人は数値を当てはめ、計算をしてみてください。

そうでない人は、以下の手順で計算すると、おおよその体脂肪率が求められ、LBMを算出することができます。

自分の標準体重を求める
身長 (m) × 身長 (m) × 22

体脂肪を求める
(実際の体重-①) ÷ ① × 100 LBMの計算式へ

種目分類別PALは、競技によって特性などが異なり、個人のエネルギー量も変わってくるため、持久系、筋力・瞬発力系、球技系とそれぞれの競技に分けて数値化したものです。表を見ると、マラソンや長距離などの持久系競技は他の競技よりも数値が高くなっていますが、これはより多くのエネルギーが必要(=著しいエネルギー消費)であることを示しています。

●「たくさん食べる」の受け取り方

高校生は「一生のうちで一番食べなければいけない(エネルギーが最も必要な)時期」と繰り返しお伝えてきました。ただ、「たくさん食べる」といっても、食が偏ってしまうと体の中で栄養をうまく使うことができません。

体を大きくする目的で、タンパク質(プロテイン)ばかりとったとしても、タンパク質を体の材料に変換するビタミンB群が不足していては筋肉になりませんし、身長を伸ばすためにはカルシウム、マグネシウムといったミネラルも同時に必要です。

また、エネルギー源である炭水化物が不足した状態でタンパク質をとっても、体の材料になる前にタンパク質がエネルギーとして使われてしまうので、目的を果たすことができないのです。

ですから、「たくさん食べる」よりも「バランス良く食べる」の方を意識してほしいと思います。これは、以前提案した「毎食7つの色をそろえる」につながってきます。

小学生のうちから心がけたいところですが、高校生になってから始めても大丈夫です。まずは量よりもバランス、7つの色の食材を毎食とるように意識して、それができるようになったら量を増やしていくといいでしょう。

●男子は男性に、女子は女性に

高校生は、男女ともにホルモン分泌が最も活発になる時期になります。男子は男性らしく、女子は女性らしく、体が変化していきます。

男子の場合、男性ホルモンが正常に分泌されていれば、それほどハードなトレーニングを積まなくても自然と筋肉の量は増えていきます。ですから、筋肉をつけるための栄養よりも、ホルモン分泌が促される栄養を考えていくと良いと思います。

女子の場合、女性ホルモンを正常に分泌させるためには、ある程度の体脂肪が必要になってきます。審美系競技(新体操、フィギュアスケートなど)や体重別競技で、過度なダイエットや減量によって適切な体脂肪が確保できないと、「女子選手の三主徴(FAT=Female Athlete Triad)」を代表とするさまざまなスポーツ障害をひき起こします。スポーツ障害は選手寿命を縮めたり、競技生活からの引退を余儀なくされるので、そうならないためにも「体脂肪を減らしすぎないこと」を認識しておきましょう。


●坂元美子氏プロフィル(神戸女子大学)
スポーツ栄養学がほとんど知られていなかったころからプロスポーツ現場での栄養指導に携わり、0からノウハウを確立。特に、野球、サッカーの成長期世代の栄養指導・サポート経験が豊富で、チームの強化にも一役買っている。長年の指導経験を後進に伝えながら、多くの人にスポーツ栄養学を知ってもらうべく、活動中。
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※この記事は、スポーツ・運動と食を結ぶwebマガジン「すぽとり」で掲載された記事を再編集したものです。
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