日本の食文化に関わる「精進料理」その秘密に迫る!?

精進料理は主に仏教の考え方に基づく料理ですが、意外と知られていない料理でもあります。
今回はそんな精進料理についてお話します!

【そもそも仏教=菜食主義…とは言い切れない!?

よく、肉や魚を食べることを「なまぐさ」と言うことがあるのは、ご存知の方も多いと思います。
肉や魚を食べるためには、動物を殺す必要がある、つまり殺生を行うため、仏教の戒律に反する行いである。
という考え方ですね。
このことから、仏教の僧は菜食主義者だ…と思ってしまうことは少なくありません。
ですが、イコールで結び付けてしまっていいほど、簡単なものではないそうです。
というのも宗派によっては卵・乳製品を食べることは禁じていなかったり、肉食も許されていたりと、考え方は様々あるのです。
ちなみに、肉食を禁止する精進料理も、菜食主義との差異があります。
それは肉や魚の他に、香りの強い野菜も使用しない決まりになっていることです。
そのため、ねぎやにんにく・にら・しょうが・唐辛子といった食材は使うことができないのです。
これは香りや刺激の強いものは煩悩を刺激するからという考え方によるそうです。


【では、精進料理とは?

考え方が様々、という仏教において精進料理はどんな位置づけなのでしょう?
これは、読んで字のごとく「精進する」ため…つまり、仏の教えを守り、修行に専念するための料理であるようです。
そう考えると、僧職に就いている方のためにある料理で、日本の食文化とはいいがたい…と思われるかもしれません。
ですが、現代よりももっと仏教の影響が強かった時代においては、権力者達もその多くが仏教を熱心に信仰していました。
そして、食糧の安定供給が難しい時代において食文化を形成してきたのは権力者達です。
このため、仏教の教えが日本料理に及ぼした影響はとても大きかったのです。
実際、明治時代になるまで肉食は解禁されていなかったのも、日本に入ってきた大乗仏教に肉食を禁とする戒律があったことが大きく関係しています(とはいえ、一般庶民は隠れて肉を食べていたそうですが…)。
しかし、千年ほど肉食を禁じていた歴史は、世界にも類を見ない日本独自の食文化を形成させました

ちなみに、明治時代以降は僧職に就いていても肉食を禁としなくなりました
これはあくまでも政府の通達ということなので、精進料理のみを召し上がるかどうかは宗派によって違いがあるようです。
そのため、現代では僧職に就かれていても肉や魚を召し上がる方もいらっしゃいます(僧侶になるための修行期間中は精進料理のみ口になさるそうですが)。
僧職に就かれている方だから完全な菜食主義なのだと一律に考えてしまわない方が良いでしょう。

Text by はむこ/食育インストラクター