出汁のバリエーションというと、どのようなものを思い浮かべますか。
基本の昆布にかつお節、しいたけ、煮干し・・。
素材からうまみを抽出したものを「出汁」と呼ぶので基本以外にも出汁として使われる食材が色々と登場しています。
【出汁の種類を探ってみよう】
出汁がとれる素材を大きく分けると植物系、魚介系、動物系に分けられます。
植物系のだしは甘みが強く出ると言われていて、昆布、干ししいたけのほか、精進料理では炒った大豆や干したかんぴょうで出汁をとることもあります。
魚介類にはかつお節や煮干しが思い浮かびますが、その他に干し貝柱や手の大きさほどの「クマエビ(アシアカエビ)」を焼いて干したものでも出汁をとります。
なお、このえびは西郷隆盛が仕えたことで有名な島津藩で、一人丸ごと一本雑煮に入れていたという豪勢な逸話も残っています。
肉類の出汁では中華料理の鶏肉でとった「湯(タン)」やフランス料理の牛肉でとった「フォン」が代表格ですが、最近の日本では、鶏節、鴨節、鹿節等、肉類をかつお節のように仕立てて出汁をとるといのも登場しています。
【素材の風味の違いが味の違い・・ではありません】
実は、単に素材ごとに風味が違うために味わいが変わるのではなく、素材に含まれているうま味の成分も異なるため美味しさが変わってくる、というのはご存知でしょうか。
一番有名なうま味成分は昆布に含まれるグルタミン酸、そしてかつお節のイノシン酸でしょう。
これらのうま味成分はこの二つの食材以外にも含まれていて、グルタミン酸は大豆やトマト、チーズやハム、干しシイタケに、イノシン酸は煮干しや干しエビ、豚肉にも含まれています。
うま味成分はこれだけでなく、グアニル酸という成分は干しシイタケに、コハク酸は干し貝柱など貝類に多く含まれています。
これらの出汁の『異なるうま味成分』をかけ合わせると1+1が2になるのではなく、相乗効果と言って何倍ものうま味の効果、深いうま味が得られます。
【味のバリエーションに挑戦しよう!】
比較的手に入りやすい、煮干しや干しシイタケでチャレンジしましょう。
使いたいときから逆算して6~8時間ほど前にファスナー付き保存袋や保存容器などに水を入れて完全に水に浸かるようにし、冷蔵庫で保存します。
基本的にはこれだけで、調理に利用できます。
もう少し詳しくポイントを挙げると、干しシイタケの出汁の場合、好みによりますが少量を他の出汁に加えると滋味深い煮物向きの出汁になります。
もちろん、もどしたシイタケも一緒に煮るなど有効に使いましょう。
煮干しは「うるめいわし」や「かたくちいわし」など色々な種類がありますが、いずれも頭とはらわたを取って、余裕があれば軽くフライパンでからいりしてから水に浸けるとよいでしょう。
水1リットルに対して煮干しが8~10匹程度が目安です。
そして火にかけ、アクが出なくなるまで加熱し、火を止めます。
この出汁は昆布出汁と併せるのがおすすめです。
みそ汁を作り、いつもと違う味わいをお楽しみください。
「出汁をとる」というと「大変な仕事」と思いがちですが、水につけているだけでも意外と美味しい出汁がとれます。
週末や行事食など、少し背伸びした料理を作りたいときに、チャレンジしてはいかがでしょうか。
Text by ゆず/食育インストラクター