クリナップ株式会社／社を挙げて「食育」推進に取り組む（前編）

後編はこちら ▶

全ショールームアドバイザーが「食育インストラクター」
　クリナップ社のショールームアドバイザーは、その全員が「NPO日本食育インストラクター3級」の資格を持っています。全国101か所のショールームに勤務するアドバイザーはおよそ400人。「私たちは心豊かな食・住文化を創ります」を行動理念の第一に掲げているクリナップ社の熱意と意欲を感じます。また、独自の情報コミュニティＷＥＢサイト「DreamiaClub」でも、「料理の美味しさ」「人の健やかさ」などを提案し、さまざまな面から食育活動にアプローチしています。

設備メーカー初のNPO日本食育インストラクター協会賛助会員
　国内システムキッチンメーカー大手のクリナップ社が、食育活動に積極的に取り組む理由を、営業本部ショールーム推進部の明拓洋（あきら・たくよう）副部長は次のように説明しています。

　「当社では、創業60周年を迎えた2009年10月に発表した新たな企業理念“家族の笑顔を創ります”を推進しています。企業理念の実現目標として、行動理念の柱を３本掲げました。その一番目が『私たちは心豊かな食・住文化を創ります』です。実現に必要な施策と考えを打ち出す中で、2013年には内閣府が認定している特定非営利活動法人「NPO日本食育インストラクター協会」（服部幸應理事長）の賛助会員になりました。

営業本部ショールーム推進部
明　拓洋（あきら・たくよう）副部長

　住宅設備メーカーでは初めての加入です。協会が掲げる“食育を通じ、生涯にわたって健全な心身を培い豊かな人間性を育む”といった理念が、当社の企業理念と一致していたことが加入の決め手でした。加入を機に、「全ショールームアドバイザー、NPO日本食育インストラクター3級取得」を打ち出し、『私たちは心豊かな食・住文化を創ります』の具現化に向けて、第一歩を踏み出したのです」

１期生400人の食育インストラクター誕生
　食育の重要性は食育基本法でも唱えられていますが、クリナップでは、座卓の製造販売業から始まり、現在の事業に至った同社の特徴を踏まえ、専門力強化と共に“食育”＝“食卓”の価値をきちんと伝えることのできる人材育成に主眼を置いています。
　必要な独自のテキストを協会の協力を得て作成すると共に、2013年11月には社内に「クリナップ食育インストラクター３級取得」講座を開設するなど、社員へのサポート態勢も整えました。
　社員は仕事の合間を見つけての受験対策となりましたが、４カ月後の今年２月の認定試験では、目標通り約400人全員の合格を成し遂げました。

「NPO日本食育インストラクター3級」はアドバイザー必須
　明副部長は「商品知識や専門知識だけでは無く、周辺の知識を向上させることによって、よりお客様の希望に沿ったプランを提案できるようになるはずです」と資格取得の効果に期待を寄せています。更に上の「2級」「1級」を取得するかは自主性に任せていく方針です。
　「クリナップでは『必要な知識を全員が持つことにより、商品選択にも安心感を持っていただける』を基本としています。食育3級資格の取得はアドバイザー必須の位置づけで、年一回の認定試験を実施します。新入社員などを対象に、次回は来年２月ごろを考えています」（明副部長）
　同社が実践する「食育インストラクター３級取得」は、他社にはまねの出来ない“食と暮らし”を見据えた新しい接客スキルとなっていくかもしれません。会社としても、「資格を活かした“食”への関心度が高い顧客との対応力を高め、永続的なリフォーム需要の掘り起こしにも役立てていきたい」との期待を寄せています。
　今後は、「食育インストラクター３級」に加えて、整理収納の資格もアドバイザー全員が取得予定としていることから、社員の持つ資格を活かしたショールームでのイベントを検討し、実施したい」（明副部長）としています。

シニア世代への食育発信
　同社が運営するＷＥＢサイト「DreamiaClub」でも、“クリナップが創造する心豊かな食・住文化は、「料理のおいしさ」「人の健やかさ」「生活空間の心地よさ」が揃って実現します”をコンセプトに掲げており、シニア世代への展開を見据えた食育活動にも力を入れていく方針です。
　橋本課長によると、ショールームを訪れる団塊世代を中心とするシニア層は、調理に関心を持つ男性が多く、キッチンのリフォームにも積極的とのこと。理由も共通していて「手料理で孫や友人をもてなし、賑やかに食卓を囲みたい」という願望があるそうです。「まずは道具や形から」ということで、孫や友人を招ける美しさと機能の充実さを求めたキッチンに、高い関心を寄せる傾向も同じと言えます。

営業本部ショールーム推進部
ドリミア推進課
橋本健史　課長

理想とする食卓風景は「サザエさん」
　シニア層が描く理想の食卓イメージは、テレビの長寿番組「サザエさん」。必ず３世代が食卓を囲み、賑やかに談笑している風景への憧れがあるようです。
　「これは、食事を作るキッチンだけではなく、食事をする場である食卓まで総合的にプロデュースし、“家族の笑顔を創ります”を企業理念に掲げる当社が、まさに目指している風景でもあります」（橋本課長）
　こうしたニーズに応えて、DreamiaClubの中でも、食育インストラクターの資格を生かし、シニアに合った食育活動や企画を考えていく予定です。