齢を重ねるにつれ、食事の量が減っていくのは自然なことです。
ただし、これまでは量を食べることで補っていた栄養が、食事量の減少と共に乱れて偏る可能性もあります。
今回はシニア層に積極的に摂って頂きたい栄養素の中から、「食物繊維」に関するお話です。
【まだまだ足りていない?】
食物繊維というと近年では「第6の栄養素」とも言われるほど重要視されています。
一般的には便秘の予防・改善効果があることで知られていますが、その他にもシニア層にとっては見逃せない、生活習慣病の予防という点でも効果が期待されています。
例を挙げると、食物繊維を摂ることで血糖値の急激な上昇をゆるやかにしたり、コレステロールと中性脂肪の吸収を抑える働きがあり、糖尿病や脂質異常症の予防に役立っていると言われています。
これだけ重要な役割を果たしている食物繊維ですが、1日当たりの目標摂取量を満たす食生活を送っている方の割合は少ないのが実情のようです。
現在、厚生労働省は成人男性で20g以上、成人女性で18g以上を1日あたりの目標摂取量と定めています。
この値は70歳以降になるまで減ることはありませんし、減ってもそれぞれ1gほどの違いしかないことからも、食物繊維の重要性がうかがえます。
シニア層は比較的目標量に近い数値の方が多い傾向にあります。
ただし、歯やあごの筋肉の衰えから、食物繊維の豊富に含まれる硬い食品よりも咀嚼回数が少なく済む柔らかい食品を好みがちになるため、摂取量が落ち込むケースも少なくないそうです。
【数値だけ満たせばいいということではない?】
とはいえ、食物繊維を増やしたいのでたくさん野菜を食べよう!とがむしゃらに食べればいいというわけでもないんです(野菜をたくさん食べること自体はいいことですが…)。
一口に食物繊維といっても、実は種類があり、おおまかに分けると「水に溶けるかどうか」で2つに分けられています。
「水に溶けない」不溶性食物繊維、こちらは主に穀類や芋類・豆類・野菜に含まれています。
一般的によく知られる食物繊維の効果である整腸作用や便通の改善の役割を果たすのがこちらです。
また、ごぼうやタケノコといった噛みごたえのある食品に豊富な傾向にあり、たくさん噛むことで満足感が得られるといった効果もあります。
「水に溶ける」水溶性食物繊維はこんぶやワカメといった海藻類、長芋やオクラなどのぬめりのある食品にも含まれています。
血糖値やコレステロール値の上昇を抑える働きはこちらが担っています。
このように役割に違いはあるものの、2017年現在ではこれらを足した「総量」が目標量に定められています。
野菜はもちろん大切ですが、さつま芋や豆類、海藻やきのこなど、たくさんの食品から少しずつ、バランスよくとった方がより良い効果が得られますよ。
Text by はむこ/食育インストラクター