今回は5月の歳時記をご紹介します。
【歳時記とは】
当初、歳時記(歳事記)は太陰太陽暦(旧暦)を基にした年中行事や四季の事物をまとめた物を指しましたが、江戸時代以降になると、俳句や俳諧の季語を分類し、解説等を加えた書物のことを指すようになりました。
現在では、「食の歳時記」や「暮らしの歳時記」「季節の歳時記」といった様々な形で行事や四季を身近に楽しみ、感じてもらえるよう出版されています。
※太陰太陽暦にも様々な計算方法があり、その中で太陽暦に変わる直前まで使用されていた「天保暦」を一般的には「旧暦」ということが多いようです。
【皐月(さつき)】
皐月は5月の別名です。
諸説ありますが、田の神のことを「さ」ということ、田畑を耕し、作物を育てる事を意味する耕作の古語「さ」から、早苗を植える「早苗(さなえ)月」、稲作を行う月が転じて「さつき」となったとする説が有力です。
「皐」という字が当てられたのは、皐が「神にささげる稲」の意味があるので、使われたのだそうです。
【5月の行事など】※2018年の旧暦を基に日にちを出しています。
2日:八十八夜(はちじゅうはちや)
立春から数えて88日目にあたる雑節です。
寒暖の差も減るので、稲の種を蒔いたり、茶摘みを行います。
88の文字は漢数字で書くと「八」が末広がりになり縁起が良いといわれ、豊作祈願や夏支度を始める吉日とされています。
昔から、「八十八夜に摘んだ茶を飲むと、75日長生きする」とされ、新茶を贈る風習があります。
※雑節…二十四節気・七十二候以外に季節を感じられるようにと作られた暦日
3日:憲法記念日(けんぽうきねんび)
国民の祝日のひとつで、「日本国憲法の施行を記念し、国の成長を期する日。」(内閣府HPより抜粋)
現在の日本の法律である、「日本国憲法」が1946年11月3日に公布、1947年5月3日に施行された事を受け、1948年に祝日として制定されました。
日本国憲法の三本柱は「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」です。
※1948年に公布・施行された祝日法に則り制定。
4日:みどりの日
国民の祝日のひとつで、「自然に親しむとともにその恩恵に感謝し、豊かな心をはぐくむ日。」(内閣府HPより抜粋)
1989年(昭和64年・平成元年)の昭和天皇の崩御に伴い、天皇誕生日であった4月29日を「みどりの日」に制定しましたが、2005年(平成17年)の「国民の祝日に関する法律」改正により、2007年(平成19年)に4月29日を「昭和の日」、5月4日を「みどりの日」と改名しました。
みどりの日の由来は、「昭和天皇が自然を大切にされ、植物への造詣が深かったため」とする説が有力です。
5日:こどもの日・端午の節句(たんごのせっく)・菖蒲の節句(しょうぶのせっく)
国民の祝日のひとつで「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する日。」(内閣府HPより抜粋)
こどもの日は端午の節句(または菖蒲の節句ともいう)でもある事から、男子を祝う日というイメージが強いですが、現在は男女問わずこどもの健やかな成長を願う日となっています。
端午の節句は古代中国の菖蒲を使った邪気払いが起源とされています。
菖蒲が「勝負」や「尚武」と同じ読み方が出来る事にあやかり、武家社会で男子の成長に関わる行事となりました。
江戸時代になると、こいのぼりや兜などを飾る五節句のひとつとされました。
菖蒲湯に浸かったり、柏餅や粽(ちまき)などをいただきます。
5日:立夏(りっか)
だんだんと夏の気配が強まる頃。
心地よい風が吹き、新芽もどんどん成長します。
21日:小満(しょうまん)
生命がイキイキとする頃。
太陽の光で地球上の全ての生き物のエネルギーが満ちてくる季節です。
【味覚】
そらまめ・グリーンピース・よもぎ・いちご・新じゃが・人参・筍・しそ
きんめだい・いさき・きす・くるまえび・めばる など
【煎茶の入れ方】
八十八夜に茶を摘む情景は「茶摘み」という歌にも出てくるほど、私達日本人には馴染みの行事、茶摘み。
食事の締めくくりや、伺ったお宅でいただくお茶は美味しいですね。
今回はお茶の中で私達が一番飲んでいる(であろう)煎茶の入れ方をご紹介します。
※煎茶=緑茶と思っている方も多いと思いますが、正確には緑茶は不発酵茶全般を指し、煎茶をはじめ玉露、ほうじ茶、玄米茶、番茶、抹茶などの総称です。
(NPO法人 日本茶インストラクター協会HP参照)
- 人数分の茶碗を用意し、沸かした湯を茶碗の八分目辺りまで注ぐ。
※湯を適温(70~90℃)にする、茶碗を温める、湯の適正量を量るといった意味があります。 - 急須に茶葉を入れる。
※一人分は茶さじ1杯(2g位)を目安に。 - (2)に(1)を全て入れ、30秒~2分蒸らす。
※茶葉によって多少時間が異なります。
パッケージに時間表記があればそちらを参考にして下さい。 - 各茶碗に少量ずつまわし注ぎ、全ての茶碗が均等な濃さと量になるようにする。
- 最後の一滴までしっかり入れてあげると二杯目も美味しく入れることが出来ます。
昨年の6月に書き始めた歳時記も今回で終了となります。
日々に追われ、寒さや暑さ等で季節を感じ、周りの景色にあまり目を向けられていなかった自分が、歳時記を書くようになり、通勤途中に植えられている植物の変化を見つけて「おっ!」と感激したり、心がほっこりする事も増えました。
昔の人々の知恵が詰まった行事、それにまつわる食べ物は人と人を繋げ、癒してくれる気がします。
忙しさの中でも、ちょっと立ち止まって、家族や友人との絆を深めてみて下さい。
また機会がありましたら、日本の文化をご紹介します。
Text by さゆり/食育インストラクター