料理に科学が関係しているの?と思われるかもしれませんが、実は何気なくやっている作業にも、たくさんの科学が詰まっているのです。
今回はそんな調理科学の中から、乳化についてご紹介します。
【乳化とは】
乳化は英語でエマルジョン(エマルション)といいます。
乳化は本来混ざることのない2種類の液体の一方が細かい粒となり、もう一方の中に混ざる(分散している)現象で、「水の中に油が混ざる(分散している)水中油滴型(O/W型)」と・「油の中に水が混ざる(分散している)油中水滴型(W/O型)」が存在します。
私たちが目にする乳化している食品は、水中油滴型だとマヨネーズ・生クリーム・牛乳などがあり、油中水滴型ではバターやマーガリンが挙げられます。
【乳化には乳化剤が必要】
先ほど、乳化は本来混ざりあわない2種類の液体が混ざり合って出来ていると説明しましたが、水と油を勢いよく混ぜて、一見混ざったように見えたとしても、実際は時間が経ってしまうと元の状態に戻ってしまいますね。
自分でドレッシングなどを作る方は思いあたる節があるのではないでしょうか。
実は、この乳化を成功させるには、乳化剤という水と油の性質をあわせ持った材料を加えてあげることで、しっかりと手を取り合った状態を保つことが出来るようになります。
「乳化とは」で挙げた乳化している食品の中で、乳製品が乳化できているのは、原料となる生乳の中にもともと乳化剤の役割を果たす成分が入っているためです。
では、マーガリンやマヨネーズはどうでしょうか。
マーガリンの原料は主に植物油脂ですが、そこに、大豆レシチンやグリセリン脂肪酸エステルなどを加えることで作られています。
次にマヨネーズはどうでしょう。
突然ですが、ここで問題です。
マヨネーズの乳化剤は次のうちどれでしょうか。
①酢 ②塩 ③卵黄 ④油
正解は・・・
↓
③の卵黄でした!
卵黄にはレシチンという成分が入っていて、これが水と油のなかを取り持ってくれることで分離を防いでくれるのです。
先ほどご紹介したマーガリンは大豆に含まれるレシチンなどが使われているのですが、卵アレルギーの方は卵黄の代わりに豆乳などを使うことで、ノンエッグマヨネーズを作ることも出来ますので、試してみるのもよいですね。
【レシチン】
ではここで、後ほど登場するレシピにもかかわるレシチンについて少しご説明します。
レシチンは卵黄・大豆・精白米などに含まれるリン脂質という脂質の一種で、150年ほど前にフランスで発見されました。
名前はギリシャ語の「レシトス(卵黄)」が由来とされています。
体の中での主な働きは細胞ひとつひとつに存在する細胞膜を作るための成分で、脂肪やコレステロールが血管の壁につくのを防ぐ働きがあり、動脈硬化の予防に役立ちます。
またレシチンは脳の集中力を高める働きもあるため、記憶や睡眠などにも欠かせない成分です。
レシチンの特徴として、水と油脂類それぞれによくなじむ性質があるため、乳化を行う上で、欠かせないのです。
それではレシピのご紹介です。
【自家製マヨネーズ】
マヨネーズは市販品が主流ですが、手作りすることが出来ます。
乳化をしっかりと自分の目で見ることが出来る数少ない機会です。
<材料卵黄1個分> 調理時間:5~10分
卵黄・・1個分
塩・・小さじ1/3
フレンチマスタード・・小さじ1
サラダ油・・100ml
酢(レモン汁でも)・・小さじ1
塩・こしょう・・各少々
<下準備>
・材料はすべて常温に戻す。
<作り方>
- ボウルに卵黄・塩・フレンチマスタードを入れ、泡立て器でしっかりと混ぜる
- サラダ油を大さじ1杯すくい、(1)を泡立て器で絶えず混ぜているところに糸を垂らすように少しずつ加える
- (2)で入れた油がすべて卵黄と混ざったら、また大さじ1杯サラダ油をすくい、(2)と同様に混ぜながら加える
- 油が1/2~2/3量くらい入り、マヨネーズがかたくなってきたら、酢(小さじ1)を加えてよく混ぜ、残りのサラダ油も糸を垂らすようにして入れながら絶えず混ぜる
- 好みのかたさになったら味を見て、塩・こしょうで味を調える
出来上がったマヨネーズはそのままディップにして食べたり、ポテトサラダやツナを加えたイタリアのトンナートソースにするなど、お好みの食べ方でどうぞ。
■ポイント
- 卵は賞味期限の長い新鮮なものを使用し、使う前に殻にヒビが入っていないかなど、必ず確認してから使用してください。(鮮度に不安があるものは絶対に使用しない。)
- マスタードは入れなくても作ることが出来ますが、マスタードを入れることで風味がよくなるのと、マスタードの成分で乳化がより安定するので作りやすくなります。入れる場合は、粒入りではなく、粒の無いフレンチマスタードがおすすめです。
- 酢は最初から入れて作っても問題ありませんが、初めての場合は水分が少ない方が失敗しにくいので、今回はあと入れにしました。
いかがでしたか。
今回は乳化についてご紹介しましたが、科学的なメカニズムを知ることによって、今までとは違った視点から料理を見ることが出来ます。
ただ作るだけでなく、どうしてこうなるのかが分かると、きっとよりおいしい料理が作れるようになりますよ。
Text byさゆり/食育インストラクター