正月にはじまり、節分、ひな祭り、端午の節句…、私たちの暮らしにはさまざまな年中行事があり、それらには和菓子が欠かせません。
和菓子はおいしいだけでなく、旬の食材を使ったり、季節感を表現したりと、古くから大切にされてきた日本の伝統文化です。
今回は季節ごとの和菓子をご紹介します。
【月別の代表的な和菓子】
■1月の和菓子「花びら餅」
丸く伸ばした餅(または求肥)に、白みそのあん、甘く煮たごぼうをのせて包んだ、新年を祝う伝統的な和菓子です。
猪や押鮎(塩漬けした鮎)、大根、瓜などのかたいものを食べて長寿を願った、平安時代の正月行事「歯固めの儀」が簡略化されたものが、花びら餅の起源とされています。
■2月の和菓子「うぐいす餅」
「春告げ鳥」とも呼ばれる、うぐいすの形をした「うぐいす餅」。
うぐいす餅は、求肥であんを包んで両端を鳥の形の様につまみ、上から青大豆きな粉をまぶした和菓子です。
■3月の和菓子「草餅」
3月3日のひな祭り(上巳の節句)と言えば、雛あられやひし餅をイメージすることが多いと思いますが、「草餅」もこの日に欠かせない和菓子です。
草餅は、よもぎの葉を練り込んだ餅のことで「よもぎ餅」とも呼ばれています。
現在ではよもぎを使うのが一般的ですが、昔は春の七草のひとつである「ゴギョウ(母子草)」を使って作られていました。
■4月の和菓子「桜餅」
春の代表的な和菓子とも言える「桜餅」。
大きく分けて関東風の「長命寺(ちょうめいじ)」と、関西風の「道明寺(どうみょうじ)」の2種類があります。
長命寺は小麦粉の生地であんを包み、塩漬けの桜の葉を巻いたもの、道明寺は道明寺粉で作った生地であんを包み、塩漬けの桜の葉を巻いたものです。
■5月の和菓子「柏餅」
5月5日の端午の節句には、「柏餅」や「粽(ちまき)」などを食べて、子どもの健やかな健康と厄除けを願います。
柏餅は、上新粉で作った餅であんをくるみ、柏の葉で包んだ和菓子です。柏の木の葉は、新芽が育つまでは古い葉が落ちないことから、「家系(跡継ぎ)が途絶えない」、さらには「子孫繁栄」と結びつき、縁起のよい食べ物として江戸時代ころから端午の節句に供えるようになったと言われています。
■6月の和菓子「水無月」
6月30日に、残り半年の無病息災を祈る「夏越の祓(なごしのはらえ)」で食べられる和菓子です。
外郎生地の上に、厄災をしりぞけると伝えられている小豆を散らしたもので、幕府や宮中などで行われていた氷室の節句にならって三角形に切り、氷に見立てています。
■7月の和菓子「葛桜」
煮溶かした葛粉をあんで包み、桜の葉を巻いた和菓子です。
透明感があり、涼やかな見た目でひんやりとした食感から、夏場によく見かけます。
■8月の和菓子「水ようかん」
あんを寒天でかためた、ツルっとした食感とみずみずしさが夏にぴったりの和菓子です。
■9月の和菓子「おはぎ」
炊いたもち米やうるち米を潰して丸め、あんやきな粉、ごまなどをつけたものです。
萩の花が咲く秋の彼岸では「おはぎ」、牡丹の花が咲く春の彼岸は「ぼた餅」と呼ばれています。
■10月の和菓子「栗名月」
栗の収穫時期にあたる十三夜には栗を供える風習があり、それにちなんで栗を使った和菓子が多く店頭に並びます。
栗にあんを混ぜて栗の形に模したもの、まんじゅうの中に栗を入れて包んだものなど、お店によってさまざまな栗名月があります。
■11月の和菓子「亥の子餅」
もともとは「大豆・小豆・ささげ・ごま・柿・栗・糖(あめ)」の7種類を餅に入れて作られていたようですが、現在では地方や和菓子店によって材料や製法が異なります。
形は亥の子餅の名前の由来である猪の子どもを模して、小豆を包んだ餅を楕円にしたものが一般的です。
十二支の亥の月にあたる旧暦の10月の亥の日、亥の刻(午後9~11時)に亥の子餅を食べて無病息災や子孫繁栄を願います。
■12月の和菓子「雪餅」
雪餅という名前がついていますが、餅粉は使わず、大和芋やゆりねをきんとんにした和菓子です。
その真っ白な見た目は、雪景色を表現しています。
今回ご紹介したのはほんの一部で、まだまだその季節ならではの和菓子がたくさんあります。
和菓子を食べ、季節の移ろいを五感で楽しんでみてはいかがでしょう。
Text by まち/食育インストラクター