地産地消と魚のお話

日本人の魚の消費量は年々減少傾向にありますが、依然として世界有数の消費量で、豊かな魚食文化を形成しています。
そんなおいしい魚をこれからも食べ続けるためには、「魚の地産地消」について知っておいて損はありませんよ!

【日本の魚の現状】

世界に名だたる魚食の国である日本。
しかし、近年は日本近海で獲れた魚ではなく、海外の遠い海で獲れた魚介類が店頭に並ぶことが増えつつあります。
国内で水揚げされた魚に比べると安価なのが魅力的で、こちらを購入することも少なくないのではありませんか?
数字でも、輸入魚をめぐる変化が現れています。
1980年代の日本の食用魚介類の自給率は90%以上でしたが、平成に入ってから大きく減少し始め、令和3年の水産庁の発表では、59%にまで下がっています。
この40年の間で、日本人が食べている魚の半数近くが輸入魚に変わっているのです。

魚の輸入が増えたことにはいろいろな要因があります。
なかでも、冷凍をはじめ加工技術がすごい速さで進歩したことが大きく関係しています。
一年を通じてさまざまな魚が食べられるようになり、獲った魚を無駄にしないで済むなど、私たちの生活をより便利にしてくれています。
しかし、日本から遠い海で獲れた魚を、獲ったその日のうちに食べることはできません。
さらに、輸送のための燃料費などのエネルギーや、それにともなうCO2の排出があるので、環境面での負荷が懸念されているのです。


【魚の地産地消とSDGs】

魚の食料自給率を上げるために個人でできることは、国内で水揚げされた魚を選ぶようにすること、特に地元や近隣で獲れた魚を優先して購入する、地産地消に取り組むことが挙げられます。
地元で獲れた魚を優先的に選ぶことは、フードロスの削減に繋がるので、SDGs「12.つくる責任・つかう責任」達成に関わります。
また、輸送コスト減により「13.気候変動に具体的な対策を」「14.海の豊かさを守ろう」などの項目の達成にも影響します。
そして、魚の地産地消は消費者にもメリットがある考え方です。
前項にもあるように、輸入された魚介類はほとんどが冷凍や加工品なので、獲って間もない新鮮な魚が食べられるのは、地産地消ならではの魅力です。
また、地産地消の魚は、生産者により近いところで購入できるので、その魚がどこで獲れたのか、どんなところを経由して店頭に並んでいるのかわかりやすく、食の安全の可視化にも繋がります。
もちろん、内陸部など、環境的な部分で地元の魚を購入するのが難しい場合があるので、すべての魚を地元産で揃えようとしなくても大丈夫です。
例えば、内陸部なら地元産の野菜を優先的に購入することで、魚と同じように輸送コストが抑えられ「13.気候変動に具体的な対策を」に貢献できますし、陸の環境が守られることで、河川を通じて海の環境を守ることにもなるのです。

魚食は日本の豊かな食文化の中心的な存在です。
10年、20年後の未来も美味しく魚が食べられる環境を守り、次の世代へ食文化を伝えていくためにも、地産地消の考え方はぜひとも覚えておきたい内容ですね。

現在はSDGsの達成のため、各自治体ごとに様々な形で地産地消が推奨されています。
個人個人ができる範囲で、一緒に取り組んでいきましょう!

Text byはむこ/食育インストラクター