2022年以降、物価は上がる一方で日本だけでなく世界的な規模でインフレが起きています。
生きていく上で絶対に必要な食料品にも値上げの波が押し寄せているので、食品の多くを輸入品に頼る日本にとって、食品への考え方、取り組みを今一度考えてみるべきタイミングなのかもしれません。
今回は食品に関わる要素の中から、フードマイレージとSDGsについてお話します。
【食品輸送と環境】
日本のカロリーベースで見た食料自給率は、令和元年に算出されたもので約38%。
これは多くの食品を輸入に頼っていることを示しています。
もし現代日本で輸入食品を利用せずに生活するとしたら、かなりの人たちが食糧不足による危機的な状況におちいります。
ここに関係するのが、フードマイレージという言葉です。
これは1994年にイギリスで提唱されたフードマイルという概念をもとに生まれた言葉で、食料の総輸送量・距離を掛け合わせて算出された値を示します。
この値が高ければ高いほど、CO2排出量の増大につながり、環境汚染の原因になり得ます。
SDGsの「13 気候変動に具体的な対策を」や「14 海の豊かさを守ろう」の達成のためにも、無視できない要素です。
そして、食品の多くを輸入品に頼り、しかも世界中の多くの国と取引を行っている日本は、世界屈指のフードマイレージの値となっているのです。
環境問題の改善は急務ですが、フードマイレージの高さは燃料費にも関わるので、その分のコストが最終的な価格に上乗せされていることも忘れてはならないことです。
実は私たちの生活にも直接的に影響を及ぼす身近な存在なのですね。
【大切な要素だけど…】
ここまでがフードマイレージの基本的な考え方ですが、もう一歩踏み込んで考えると、環境と生活の両方への理解・関心に繋がります。
フードマイレージを減らす最も有効な方法は、食品を輸入しないことです。
しかし、これは極論で、現実的ではありません。
仮にそれを行えば、日本でのSDGs「2 飢餓を減らそう」の項目が逆行することになりかねません。
また、食品の輸出入は立派な産業のひとつなので、失くしてしまえばSDGs「8 働きがいも経済成長も」の達成にもマイナスになります。
フードマイレージは大切な考え方ですが、あくまでも指標のひとつです。
実際、算出方法はかなり大きなくくりで行われています。
例えば個々の食品の輸入量はそれほど多くなかったとしても、日本から遠い国で生産された食品を輸送した場合、フードマイレージは高くなります。
日本の食品輸入の最大の取引相手はアメリカ(農林水産省 令和3年の統計より)なので、単純に太平洋を隔てた向こう側から輸送しているものが多く、それだけフードマイレージの値に反映されます。
一方で、取引先を近隣国だけにすれば大きく減るのは明らかですが、品質や取引量・価格など様々な問題が出てくる可能性があるので、これも非現実的といっていいでしょう。
フードマイレージは食品の価格に関係するので、覚えておきたい言葉のひとつですが、それにばかりとらわれ過ぎないようにしたいですね。
フードマイレージの減少については、国家間の輸出入の取り決めなどもあるので、個人でできることは限られます。
地産地消の観点からも、地元で生産された食品を購入するなど身近なことから始めましょう。
輸送分のコスト・時間が抑えられ、比較的安価で鮮度がよいものが手に入りやすいので、消費者側にもメリットがある取り組みのひとつです。
気になった方はぜひ実践してみてくださいませ。
Text byはむこ/食育インストラクター