「貧困」や「飢餓」の現状を知ろう

国連加盟193か国が2016年~2030年の15年間で達成するために掲げた目標、SDGs(持続可能な開発目標)の中に、『1.貧困をなくそう』、『2.飢餓をゼロに』という項目があります。
“「貧困」や「飢餓」は海外の話でしょ?”と思う方も多いようですが、日本でも現実に起きている問題です。
今回は、「貧困」と「飢餓」の現状を見ていきたいと思います。

【「貧困」とは?】

貧困にはいくつか考え方がありますが、大きく「絶対的貧困」と「相対的貧困」の2つに分けられます。
とりわけ“服や食べるもの、住居がない”といった、人間として最低限の生活を送れない「絶対的貧困」は、最も緊急の問題です。
「絶対的貧困」の具体的な指標として、「国際貧困ライン」という世界銀行が定めた『1日2.15米ドル未満で暮らしていること』というのが挙げられます。
2.15米ドルは、日本円に換算すると約340円(2024年6月時点)。
この価格で食べ物、飲み物、電気・ガス・水道、家でかかるお金などを1日分まかなう生活をしなくてはなりません。
世界では「絶対的貧困」の人が約6.5億人もおり、世界人口の12人に1人がこの状態で暮らしています。


【日本の現状は?】

日本では一般的に貧困や飢餓は海外の問題と捉えられがちですが、実際には日本国内でも食事の量や栄養が十分に摂取できず、死には至らなくても健康に影響を及ぼすケースが存在します。
主な原因としては、経済的な困難や生活環境の変化、高齢者の孤立などが挙げられます。

<日本では「相対的貧困」が起こっている>
「相対的貧困」とは、一定の収入水準以下の生活を余儀なくされている状態を指します。
一般的に、“その国の所得の中央値の半分(貧困ライン)を下回っているかどうか”で判断します。
厚生労働省の調査によると2021年の貧困ラインは127万円となっており、日本の相対的貧困率は15.4%に達していると言われています。
日本の相対的貧困の人口としては、約1800万人が貧困ライン以下で生活していることになります。

【相対的貧困がもたらす食への影響】

相対的貧困の食の問題として、以下のことが挙げられます。

●食事の質的な問題
相対的貧困状態にある家庭では、安価な食材や加工食品を選ぶ傾向があります。
その結果、食事の栄養バランスが乱れ、肥満や非感染性疾患(NCDs)のリスクが増加する可能性があります。

●食事の量的な問題
必要な栄養を摂るための食事量を確保することが困難で、結果的に栄養不足に陥る可能性もあります。

 【「飢餓」とは?】

飢餓とは十分な食べ物を食べられずに栄養不足になり、健康を保つことができなくなった状態を指します。
現在、世界では約7.4億人が飢餓に苦しんでいます。
これは世界人口の9人に1人の割合で、飢餓に苦しむ人の多くは途上国に住む人々です。
飢餓が最も広がっている地域はアフリカです。
そして、飢餓人口が最も多いのはアジア(特に南アジア)で、約4億人以上もの人が飢餓で苦しんでいます。

【私たちにできることってなんだろう?】

どこか他人事のように考えてしまいがちな「貧困」や「飢餓」ですが、上記でご紹介したようにどちらも日本で起こっています。
では、具代的にはどのような事をすれば、貧困や飢餓を減らせるのでしょうか?

  • フードバンクへ食品を寄付する
  • 食べられるだけの食料を購入する事で、食品ロス削減に協力する
  • 「子ども食堂」の支援に携わる
  • SDGsに取り組んでいる企業のフェアトレード商品を購入し、生産者に公正な利益を分配する
  • 飢餓問題に取り組んでいるNPOやNGOに寄付をして、国際協力に参加する

日本では、政府や地方自治体が食品ロス削減や給食制度の充実、低所得層への支援策などを通じて、国内の飢餓問題に取り組んでいます。
そのほか、国際的な支援活動にも積極的に参加し、世界的な問題解決に協力しています。

 「貧困」と「飢餓」は隣り合わせです。
この2つの問題を私たち日本人も決して他人事だと思わず、「食べる幸せ」を皆で分かち合える世界にするために、私たち1人1人が行動を起こすことが大切です。
皆さんも、できることから始めてみませんか?

Text by ろい/食育インストラクター