各地域に古くから伝わる郷土料理のなかから、今回は熊本県の「いきなり団子」をご紹介します。
【熊本県の郷土料理】
■だご汁
小麦粉に水を加えて捏ね、手でのばしてちぎった団子を入れた汁です。
「だご」は熊本の方言で「だんご」を意味し、だんご汁とも呼ばれています。
具材は、里芋やさつま芋、ごぼう、にんじん、豚肉、鶏肉など、地域や家庭、季節によってさまざま。
たくさんの具材を煮込み、みそまたはしょうゆで味つけして食べられています。
手軽に作れ、腹持ちがよいことから、古くから農作業の合間などに食べられていたようです。
今では、各家庭で受けつがれているほか、学校給食にも登場しています。
熊本県だけでなく、九州に広く伝わる郷土料理です。
■からしれんこん
ゆでたれんこんの穴にみそと和からしを混ぜ合わせたものを詰め、卵やうこんで色づけした黄色の衣をつけて油で揚げたものです。
病弱だった熊本藩主細川忠利に滋養強壮になるれんこんをすすめたものの、泥の中で育つ不浄のものとして食べてもらえなかったそうです。
そこで工夫を凝らして作ったのが「からしれんこん」。
見た目では、れんこんと分からず、れんこんの穴が家紋である九曜紋に似ていることから大層気に入り、門外不出となりました。
それ以降、明治時代になるまで一般に広まることはありませんでしたが、今では家庭や飲食店などで気軽に食べられる料理になりました。
■がね揚げ
さつま芋を太めの拍子木切りにし、衣をつけて油で揚げた、天草に伝わる郷土料理です。
衣にはしょうがを入れて香りをつけ、砂糖を加えて甘く仕上げるのが特徴です。
南九州地方で「がね」は「カニ」を表し、揚げたものがカニの足に見えることから「がね揚げ」と呼ばれています。
似た料理はほかの地域でも食べられていて、鹿児島県や宮崎県では「がね」という名で親しまれています。
■いきなり団子
輪切りにしたさつま芋を小麦粉の生地で包んで蒸した、素朴なおやつです。
さつま芋を収穫する農作業の合間に食べるおやつとしてよく作られていました。
「いきなり」は熊本の方言で「簡単、手軽、すぐに」などと言う意味で、短時間で簡単にできるということのほか、急な来客でもすぐに出せるというのが名前の由来です。
数十年前からさつま芋のほかに小豆あんが入るようになり、現在ではこちらが主流になっています。
【「いきなり団子」を作ってみよう!】
塩気のあるモチモチの生地に、ホクホクのさつま芋とあんこの甘さが絶妙です。
<材料(6個分)> 調理時間:40分(生地を寝かせる時間は除く)
さつま芋・・1本
A薄力粉・・40g
A強力粉・・20g
Aだんご粉・・20g
A砂糖・・10g
A塩・・小さじ1/3
Aサラダ油・・小さじ1/2
水・・大さじ3~
こしあん‥90g
<作り方>
- さつま芋は1~1.5cm厚さに切り、厚めに皮をむいて水に20~30分つける。
こしあんは6等分し、丸めておく。 - ボウルにAの材料を入れて軽く混ぜ合わせ、水を少しずつ加えてよく捏ねる。
ひとかたまりになり、なめらかになったらラップに包み、30分程度寝かせる。
※生地のかたさは、耳たぶくらいのかたさが目安です。水は加減しながら加えてください
※モチっとした生地にするため、今回は強力粉を少し加えています。ご家庭にない場合には、その分を薄力粉にしていただいても大丈夫です。 - (2)の生地を6等分して丸く伸ばし、その上にこしあん・水気をふき取ったさつま芋をのせて包む。
- 蒸し器にクッキングシートを敷いて(3)を並べ、蒸気の上がった状態でさつま芋がやわらかくなるまで約20~30分蒸す。
出来立て熱々がおすすめですが、食べきれなかったときには冷蔵、冷凍保存が可能です。
1個ずつラップに包み、ジップ付きの保存袋に入れて保存しましょう。
食べるときには蒸し器、もしくは電子レンジで温め直します。
いずれにしても手作りなのでそれほど日持ちはしません。
冷蔵は1~2日、冷凍は1週間を目安に食べきるようにしてください。
まだまだ日本各地には、その土地ならではのおいしい料理がたくさんあります。
いろんなものを食べたいけれど、なかなか旅行に行けないという方も、今ではお取り寄せなどもできるので、いろんな地域の郷土料理を楽しむのもよいですね。
Text by まち/食育インストラクター