日本料理の花形「天ぷら」その発祥は…?

今では世界に通じる料理となっている「天ぷら」
日本料理の中でもメインの扱いをされていることも少なくない存在です。
天つゆ派・塩派・しょうゆ派…食べ方の好みも様々なこの料理、いつごろから日本の食卓に並び始めたのでしょう?

【日本料理誕生から数百年でようやく生まれた料理】

日本料理の世界に天ぷらが登場したのは、室町時代から安土桃山時代にかけてだと言われています。
日本料理の元となる膳の考え方が生まれたのは平安時代であることを考えると、それから数百年経ってようやく生まれた料理です。
食用油が常に安価で手に入る現代とは違って、当時の油は高級品で、使用用途も夜の灯りのためです。
ただでさえ高価な油を大量に使用しなければならない天ぷらが、南蛮貿易が始まる時代まで生まれなかったのも不思議ではありません。
(揚げ物の調理法そのものはそれ以前にも存在していたそうです)


【忙しい時の栄養補給源だった!?】

天ぷらの語源については諸説あり、有力視されているのがポルトガル語説とスペイン語説です。
いずれにしても元は南蛮渡来の料理だったということから、「天ぷらは日本料理ではない」とする説も存在します。
そんな南蛮渡来の高級料理だった天ぷらが、一般庶民の食事になるのは江戸時代以降のこと。
江戸の町で串揚げのようにして屋台で販売され、手軽な軽食として爆発的に広まったそうです。
確かに、天ぷらは高エネルギー+高脂質なので、忙しくてゆっくり昼食を食べている暇もない!という時にお腹を満たすにはうってつけの一品でしょう。
この時に揚げていたのは魚介類が中心ということですから、たんぱく質の補給源にもなるため…
なんと!人間の主要なエネルギー源である3大栄養素のいずれも摂取できているのです(注:あくまでも3大栄養素が補給できるというだけで、バランスの良い食事とは別の話です)。
この時に普及した江戸前天ぷらは揚げ油にごま油を使用します。
本来は魚介の臭みを消す目的が主だったようですが、ごま油特有の香ばしさが加わることで、他には無い風味が楽しめると、今でもごま油をメインで使う天ぷら専門店もあります。

ちなみに、ご家庭の天ぷらの揚げ油にごま油を少し加えるだけでも普段と変わった風味が楽しめるので、いつもの天ぷらに飽きた際に試してみてはいかがでしょうか。

Text by はむこ/食育インストラクター