初春の代表的な若菜で、独特な香りとシャキシャキとした食感が特徴の「せり」。
鍋物やお浸し、和え物、サラダ、天ぷらなどさまざまな調理法でその味を楽しめ、「春の七草」としても有名な野菜です。
【数少ない日本生まれの野菜「せり」】
せりは水辺や湿地に自生する日本原産の野菜です。
その名の由来は、「一か所に競り(せり)合って生えている」という説や、「茹でて食べた時の音が「セリセリ」と聞こえる」からなど、諸説あります。
日本最古の和歌集「万葉集」にも登場しており、奈良時代にはすでに食用として食べられていたとされています。
その後、平安時代には栽培が行われるようになりました。
せりは夏ごろに花をつける植物ですが、やわらかな新芽を食用とするため、2~4月においしい時期をむかえます。
【せりの選び方と保存方法】
葉が鮮やかな緑色で、茎から葉先までシャキッとしているものを選びましょう。
茎が太いものよりも細めのものの方がシャキッとした歯ごたえを楽しむことが出来ます。
保存する際には、乾燥しないよう水で湿らせたペーパータオルで包んでからビニール袋に入れ、野菜室に立てて保存します。
日が経つにつれ、特徴である香りが薄れてしまうので、購入したら出来るだけ早めに食べるようにしてください。
【見た目が似ている!?「三つ葉」との見分け方】
せりと見た目が似ている野菜に三つ葉が挙げられます。
三つ葉もせりと同じく、セリ科の多年草なので、パッと見ただけでは、どちらがせりなのか分からなくなるといったことも…。
そんな時は、葉の枚数に注目!
三つ葉はその名の通り葉が3枚なのに対し、せりは葉が5枚ついています。
ちょっとしたことですが、覚えておくと、食材選びも楽しくなりそうですね!!
【女性に嬉しい!せりの効能】
せりには、体内でビタミンAに変わるβ-カロテンやビタミンK、ビタミンC、葉酸などのビタミン、カリウムや鉄などのミネラルが豊富に含まれています。
β-カロテンは優れた抗酸化作用があり、がん予防や老化防止などに効果が期待出来ます。
油脂と一緒に摂ることで吸収率がアップするので、鍋物やお浸しに油揚げを入れたり、和え物に少し油を垂らしたりするとよいでしょう。
ビタミンKは骨を形成するのに欠かせないビタミンで骨粗しょう症予防に、ビタミンCは皮膚や血管を丈夫に保つ働きや、シミのもとであるメラニンの生成を抑制する作用があるので、美肌に効果的です。
また、造血作用のある葉酸や鉄は貧血予防や改善に効果が期待出来ます。
さらに、せり特有の香りは、冷え性改善に期待出来るなど、せりには女性に嬉しい効果がたっぷりとつまっています。
【「春の七草」だけではない!?「秋の七草」知っていますか?】
せりは「春の七草」のひとつです。
春の七草とは、1月7日の「人日の節句」に無病息災の願いを込めて食べる「七草粥」に入れられる7つの野菜、「せり、なずな(ぺんぺん草)、ごぎょう(母子草)、ほこべら、ほとけのざ、すずな(蕪)、すずしろ(大根)」のことです。
この春の七草は知っている人も多いと思いますが、実は「秋の七草」もあるのをご存知ですか?
春の七草は食べて無病息災を願うのに対し、秋の七草は食材としてではなく、観賞用として秋を感じるもので、「おみなえし、おばな(すすき)、ききょう、なでしこ、ふじばかま、くず、はぎ」の7つの植物のことを言います。
【最近人気の「せり鍋」をお家で作ってみよう!!】
せりの主な産地は、宮城県と茨城県で、この2県で全体の生産数の半数以上を占めています。
せりの入った鍋と言えば秋田県の郷土料理「きりたんぽ鍋」が有名ですが、せりの一大産地である宮城県では、せりと鴨肉(または鶏肉)を使った「せり鍋」がとても人気があるそうです。
そこで、今回は「せり鍋」をお家で作ってみました。
<材料>
鶏もも肉・・1枚
せり・・2束
水・・4カップ
鶏がらスープの素・・小さじ2
Aしょうゆ・・大さじ2
A酒・・大さじ1
Aみりん・・大さじ1
<作り方>
- 鶏肉はひと口大に切り、少量のサラダ油(分量外)を熱したフライパンで両面に焼き色をつける。
(この後煮るので、中まで火が通っていなくて大丈夫です。) - せりは根をタワシなどでしっかりと洗って土をおとし、3~4等分の長さに切る。
- 鍋に水・鶏がらスープの素・(1)の鶏肉を入れて火にかけ、沸いたらAを加える。
- 鶏肉に火が通ったらせりの根を加えて1~2分煮、最後にせりの葉の部分を加え、サッと煮て火を止める。
シャキシャキの食感を楽しむため、葉の部分はサッと出汁にくぐらせる程度にしましょう。
そして、シメはそばがおすすめです。
せりと鶏肉のうまみたっぷりの出汁にそばをくぐらせてお召し上がりください。
Text by まち/食育インストラクター