火傷に気をつけながら、熱々の焼き芋を割ると…輝くような黄金色。
「これからの季節のおやつはこれじゃなきゃ!」という方もいらっしゃるのではないでしょうか?
今回はみんなの大好きなさつま芋に関するお話です。
「焼き芋大好き!」という方はぜひぜひご覧くださいませ☆
【焼き芋は世界共通ではないらしい…】
今でこそ日本では朝、昼、晩の一日三食を食べられるのがあたり前の時代ですが、歴史を振り返れば食糧事情の安定しない時代の方が圧倒的に長かったのです。
中国から沖縄(当時は琉球王国)を経由して九州に渡来したさつま芋は、その育てやすさと高い栄養価から救荒作物として広まりました。
実際、江戸の三大飢饉のひとつに数えられる享保の大飢饉において、さつま芋の生産が盛んだった地域では、ほとんど餓死者を出さなかったそうです。
世界に目を向けてみても、さつま芋は救荒作物としての地位を確立しています。
しかし、救荒作物の側面が強すぎるせいか、アジア圏を除く海外で主流のさつま芋は、現代日本人が好む、甘くてホクホクしたさつま芋とは違うものなのです。
それはオレンジ色のさつま芋で、日本の品種では、鹿児島など一部地域で栽培されている「にんじん芋」がこの特徴を持っています。
アメリカではヤム(Yam)と呼ばれることもあるようです。
この色合いはβ‐カロテン由来のため、にんじんのような香りがあります。
そして食感がべチャッとしていてなんだか水っぽく…ホクホクの焼き芋に慣れた日本人が食べると面食らうこともあるほど。
基本的には料理の具材に使うもので、そのまま焼き芋やふかし芋にして食べるものではないそうです。
栄養価のバランス、という意味ではオレンジのさつま芋の方が優れているといえるのかもしれませんが(※β‐カロテンは抗酸化物質なので、免疫力を高めたり肌の調子を整える働きがあります)黄金色の焼き芋がマイナーな存在で、晩秋から冬にかけてのおやつの楽しみが無いなんて、ちょっと寂しい話のような気がしてしまいますね…。
【お芋の個性を見極める】
よくよく考えてみると、さつま芋ってすごい食品です。
ただじっくり焼くだけで、調味料を一切使わないのに、果物にも勝るとも劣らない甘さを生み出します。
砂糖が安価で流通するようになったのはつい最近の時代であることを考えれば、この甘さが庶民の味として人々に愛されるのも納得です。
焼き芋はシンプルな作り方だけに、品種によって味や食感が大きく異なります。
したがって、品種ごとにファンがついています。
この点はお米によく似ていますね。
自分好みの焼き芋を楽しむために、代表的な品種の特徴をチェックしてみましょう!
①紅あずま
関東地方での生産量が多く、ホクホク焼き芋のイメージがこの品種です。
筋っぽさが少なく、食べやすいのもこの品種ならではの特徴。
ねっとり系のさつま芋に比べると甘さは控えめに感じられますが、生産量が多く安価で手に入りやすいのもこの品種の嬉しいポイントです。
②安納芋
ねっとり系さつま芋の火付け役、ともいえるのがこの安納芋。
先ほど挙げたにんじん芋のようにβ‐カロテンが含まれているので、少しオレンジがかった色合いなのが特徴です。
ねっとり濃厚な独特の食感は、焼き芋にした後に冷やして食べるといった、別の楽しみ方も可能になります。
③紅はるか
しっとりした食感で上品な甘さがあるのがこの品種です。
甘さの秘密は麦芽糖の含有量が多いことで、食べた瞬間は強い甘味を感じますが、くどさが無く、後味がすっきりしています。
④鳴門金時
ホクホク食感としっかりした甘さが特徴の品種です。
ホクホク系のさつま芋の中でも甘さが特に強い品種で、栗のようだと言われることもあるほど。
ただし、鳴門の名が示す通り徳島県のブランド芋なので、流通量は他の品種に比べて少なく、価格が若干高めになりやすい点は覚えておきたいところです。
書いていたら焼き芋が食べたくなってきました…。
ですが、さつま芋は収穫した直後ではなく、少し貯蔵して水分を飛ばした晩秋から冬にかけてが最もおいしい時期です。
収穫期からもう少しだけ待って、ベストなタイミングのさつま芋を堪能しましょう!
Text by はむこ/食育インストラクター