やさしい甘さとホクホクとした食感が魅力の「栗」は、スイーツから料理まで幅広く活躍する食材です。
【栗の歴史】
9月中旬から10月が旬の栗は、フルーツの中では堅果(皮がかたく、種を食用とするフルーツ)に分類され、一般的にはナッツの仲間になります。
歴史はとても古く、縄文時代の遺跡で数多くの栗が出土されたことから、9千年ほど前から野生の栗を採集していたと考えられています。
戦国時代には、栗の実を乾燥して臼でつき、殻と渋皮を取り除いて保存食として用いられてきた「かち栗」を兵士に持たせていました。
それは、「かち栗」の栄養価の高さや、臼で搗く(つく)の古語、「かつ」と「勝ち」をかけた縁起のよさから士気を高めるためであったそうです。
【世界の栗の産地】
世界各地でも栗は貴重な食べ物として古くから大切に育てられてきました。
種類は大きく、「日本栗」、「中国栗」、「ヨーロッパ栗」、「アメリカ栗」に分けられます。
日本栗は野生のしば栗を品種改良したもので、粒が大きいのが特徴です。
中国栗は小粒で渋皮がはがれやすく、甘栗に適しています。
ヨーロッパ栗は主に地中海周辺で栽培され、やや大きく渋皮がはがれやすいため、マロングラッセや焼き栗などに用いられています。
アメリカ栗は小粒で渋皮がはがれやすいのですが、病気に弱いため日本国内での栽培は難しいようです。
【日本の代表的な栗の種類】
日本では、100種類以上の栗があると言われています。
その中の代表的な品種4種類をご紹介します。
●筑波(つくば)
日本で最も多く栽培されている品種で、短三角の形や、とがった上部が特徴です。
果肉の色は淡い黄色で、香りが強く、甘みもたっぷりです。
●丹沢(たんざわ)
北海道と沖縄県以外の全国各地で栽培されている品種です。
円形で皮にしま模様があるのが特徴です。
大粒で淡い黄白色の果肉は、甘みや香りが控えめです。
●利平(りへい)
岐阜県で生まれた、日本栗と中国栗の雑種です。
果肉は淡い黄色で、ほどよい甘みが特徴です。
●銀寄(ぎんよせ)
大阪が原産で、楕円の形と風味豊かな香り、強い甘み、ホクホクとした果肉が特徴です。
有名な丹波栗の多くはこの品種です。
【おいしい栗の選び方】
鬼皮にツヤとハリがあり、ずっしりと重いもの、ふっくらと丸みがあるものを選んでください。
表面に小さな穴が開いているものは、中に虫がいる可能性が高いです。
また、傷があり、黒ずんでいるものは避けるようにしましょう。
すぐに使わない場合には、乾燥しないようにビニール袋に入れ、冷蔵庫で保存することで、1週間くらいは新鮮な状態を保つことが出来ます。
【栗をかんたんにむくコツとは】
栗はおいしいのですが、かたい果皮に包まれているので、むくのが大変ですよね。
そこでちょっとしたことでかんたんに皮がむけるコツをご紹介します。
- 包丁の刃元を使って鬼皮に少し切り込みを入れる。
- 熱湯に1時間ほど浸ける。(熱湯は沸いたら火を止めてOK)
- 底のざらっとした部分を切り落とし、切り口に包丁を入れて引っ張るようにむく。
これだけで無駄が出ず、かんたんに皮をむくことが出来ますよ!!
食べきれない栗は皮をむいた状態でビニール袋に入れ、冷凍することも可能です。
【栗の嬉しい効果とは?】
栗の主成分は炭水化物です。
このでんぷん質はさつま芋などと似ていて、収穫してすぐに食べるよりも3~4日寝かせた方が、でんぷんが糖に変わるため甘味を強く感じることが出来ます。
ほかにも、たんぱく質や脂質、ビタミンB1、B6、ビタミンC、カリウムなどの栄養成分がバランスよく含まれています。
ビタミンB1は炭水化物をエネルギーに変え疲労回復に、ビタミンB6はたんぱく質の代謝に働き、皮膚や髪を丈夫にしてくれます。
ビタミンCはコラーゲンの生成に関わり、肌にハリとツヤを与えてくれます。
栗に含まれるビタミンCはでんぷん質に守られているので、加熱しても損失しにくいという特徴があります。
そして渋皮にはポリフェノールの一種、タンニンが含まれています。
タンニンは強い抗酸化作用を持ち、がん予防や動脈硬化に効果が期待できます。
さらに食物繊維も多く含まれるので、便秘改善に役立ちます。
渋皮は食べにくいと思いますが、渋皮煮などにしてぜひ召し上がりください。
栽培や加工、冷凍などの技術が発達した今、通年手に入る食材が増えてきていますが、生の栗は限られた季節にしか出回らない、旬を感じられるもののひとつです。
いろいろな栗料理を食べて秋の味覚を楽しみましょう!!
Text by まち/食育インストラクター