古今東西を問わず、多くの国で作られてきた漬物。
日本は特に漬物の種類が多い食文化を形成していると言われています。
減塩ブームで漬物から遠ざかっている方も多いようですが、今一度漬物のすごいところをお伝えいたします!
【保存食じゃない漬物もある!?】
冷蔵庫の普及した現代はともかく、それ以前の時代では食べ物の保存は死活問題と言っても過言では無いほど重要な問題でした。
多くの国には四季による気候の変動があるため、一年を通していつでも安定した量を供給できる農作物はほとんど無いといえます。
そこで、収穫した作物を加工して保存するために生まれたのが漬物です。
世界各国で多種多様な漬物があり、日本人になじみ深い野菜だけで漬けるものもあれば、イタリア料理でおなじみのアンチョビのように、魚を漬けるものもあります。
いずれにしても大切なのは塩の存在で、漬け込んだ食材から余分な水分を引き出すことで、腐敗しにくい環境を整えて発酵させていきます。
発酵とは発酵菌(メジャーなものでは乳酸菌など)がたくさんいる状態なので、人間に有害な菌(腐敗菌)が増殖しにくい環境になっています。
このため、冷蔵庫の無い時代でも長期保存が可能だったのですね。
日本では長期保存用に古漬け(塩と野菜だけで漬けるシンプルな漬け方)という手法があり、冬場の野菜不足を補う存在でした。
このことから漬物はなんでも長期保存ができると勘違いされやすいのですが、漬け方によって保存期間は異なります。
例えば、漬物のレギュラーともいえるぬか漬けは、漬け込んだ野菜を長期保存するというより、日々のおいしいおかずといった位置づけの存在です。
白米を主食とすることが増えた江戸時代以降から、あまった米ぬかを使って作り始めたのがルーツだとされ、長期保存できるのは適切に管理されたぬか床であって、ぬか漬け自体は数日程度の日持ちなのです(ぬか床に入れっぱなしの場合は長期保存できますが、それはぬか床の古漬けであって、一般に想像されるようなぬか漬けではなくなってしまいます)。
また、当然ながらメンテナンスを怠って発酵菌が減るとほかの有害な菌が増殖するリスクが高まるので、「ちょっとぬか床を放っておいたらカビてる…!?」なんてトラブルが発生する可能性があるのも、ぬか漬けの長期保存の難しいところです。
なお、日本でいうところの浅漬けは、漬けた食材が発酵する前に食べてしまうので、発酵食品とは言いがたい存在。
こちらは食中毒の危険性も高くなるので、もう一品欲しい!という時のさっと作れる存在と考え、保存は考えないものとした方がよいでしょう。
【漬物はすごい(塩分もすごい)】
塩分が悪者のように扱われることも多い昨今。
「漬物は塩分がすごいから食べないようにしているの」という方も増えているようです。
ですが、漬物は日本古来の立派な発酵食品です。
善玉の腸内細菌を増やして免疫力を高めてくれます。
それはまた、便秘の解消や美肌効果など、女性にとって特に嬉しい効果も期待できます。
発酵食品は野菜と一緒に食べると、野菜に含まれる食物繊維によってさらに効果が高まると考えられています。
それなら、野菜の発酵食品である漬物は最強の発酵食品と言っても過言ではないかも!?
漬物の塩分量は確かに高めですが、そのしょっぱさのためにほかのおかずよりもかなり少なめに食べられていると思います。
例えば、きゅうりのぬか漬けを一本まるまる食べたなら、塩分量はかなりの数値になるかもしれませんが、健康な方が数枚程度を食べたぐらいで体調不良に直結することはまずありません。
(※当然ながら、医師からナトリウムを制限するよう指導されている方は別です)
また、塩分が気になる時は水にさらして塩抜きしたり(うま味も抜けるのでほどほどにしないとおいしさもなくなりますが)、炒め物などに加えて調味料を減らすなど、上手に使いこなせれば、おいしく、体にもよい食べ方を実践できますよ☆
厳密に保存食と呼べるのは古漬けとなってしまいますが、漬物は日本を代表する発酵食品のひとつです。
塩分の摂り過ぎに注意しつつお楽しみ下さいませ☆
Text by はむこ/食育インストラクター