干し椎茸は、日本料理のルーツのひとつである精進料理の出汁をとる際に欠かせない食材です。
今回は、うま味も栄養もたっぷりの“干し椎茸”のお話です☆
【干し椎茸の歴史】
もともとは自生している椎茸を収穫していたため、武士や裕福な人々など限られた層しか食べられない高級食材でした。
江戸時代に入り、ようやく栽培が普及しましたが、庶民が日常的に口にできるようになったのは、昭和に入ってからです。
昭和に入ると、種菌を培養して原木に植えつける原木栽培の方法が開発され、生の椎茸も干し椎茸も、生産は世界の中で日本の独壇場でした☆
しかし近年、中国で菌床による栽培技術が盛んになり、世界最大の椎茸栽培国は中国となっています。
日本では主に大分県や宮崎県で生産され、日本の干し椎茸の多くは原木で栽培されています。
【「椎(しい)」の木に生えていた?】
天然の椎茸は、椎やコナラ、クヌギなどの広葉樹の枯れ木や倒木に生え、その養分を吸収して育つキノコです。
漢字で「椎茸」と書くのは、“「椎」の木によく生えていたから”という説があります。
このほか、育て方によっては四季を通じて育つことができるので、「四季茸」が転じて「しい(き)たけ」になったという説もあります。
【かさの開き具合で名前が変わる!】
干し椎茸には「どんこ」・「香信(こうしん)」などの種類があります。
これらは品種の違いと思われがちですが、どちらも同じ菌から育つ椎茸です。
その違いはずばり…かさの開き具合にありました!
●どんこ
- かさが7分開き以前の状態で収穫されたもの
- 肉厚で、歯応えがある
- 縁が内側に巻き込み、全体的に丸みを帯びている
●香信
- かさが7分開き以上の状態で収穫されたもの
- 薄く、味がよく染み込む
- かさが開いている分、戻りが早い
- 縁の巻き込みが浅く、全体的に平らな形をしている
●花どんこ
- 寒さと乾燥により、かさの表面が花のようにひび割れているもの
- 亀裂が茶色のものを「茶花」、白いものを「天白」と呼ぶ
- 「茶花」は希少価値が高く、高級品とされている
最近では石づきを除き、かさの部分をスライスして乾燥させたものも店頭に並んでいます。
戻しやすく使いやすいのが魅力ですが、香りや風味は、切っていない「どんこ」や「香信」には劣ります。
料理によって、使いやすい大きさや形状を選んでみてくださいね☆
【香りと美味しさの秘訣☆】
干し椎茸が、生の椎茸よりも香りやうま味が強いのは、乾燥する過程で酵素と熱の働きによって、香り成分(レンチオニン)とうま味成分(グアニル酸)が増えるためです。
レンチオニンは、たった100万分の1gでも料理の香りを高めると言われています。
グアニル酸はアミノ酸の一種で、グルタミン酸、イノシン酸と並んで「三大うま味成分」とも呼ばれます。
干し椎茸には、生の椎茸のおよそ10倍ものグアニル酸が含まれています。
【どんな栄養があるの?】
●エルゴステロール
エルゴステロールは、紫外線を浴びるとビタミンDに変化する成分です。
カルシウムやリンなどのミネラル分を調整する働きがあるため、骨粗しょう症予防やストレスの緩和、成長期のお子さんの骨や歯の形成などに役立ちます。
●食物繊維
食物繊維の一種であるβ-グルカンは免疫力アップに働き、大腸がんの予防や、コレステロールや血圧、食後の血糖値の上昇を穏やかにする効果があります。
●エリタデニン
椎茸やマッシュルームから抽出されるキノコ特有の成分で、血液中の悪玉(LDL)コレステロールを減少させる効果があります。
水に溶けやすく熱に強いという性質があるので、戻し汁を有効に活用しましょう☆
そのほか、味覚を正常に保つために必要な栄養素である亜鉛や、疲労回復効果のあるビタミンB1など、さまざまな栄養素が含まれています。
【おすすめの戻し方☆】
干し椎茸は戻し方ひとつで、おいしさが倍増します♪
肉薄のものは数時間、肉厚のものは1日程度、冷水に長時間つけることによって、酵素が活発に働き、グアニル酸が増加し、味に深みが出ます!
急いで戻したいときには、ひとつまみの砂糖を入れたぬるま湯に浸すと早く戻りますよ☆
そのほかにも、干し椎茸を少し戻してから切り、さらに水につけるという方法もおすすめです!
最近では、トマトジュースや豆乳で戻す方もいらっしゃるようです。
気になる方は調べてみてくださいね♪
【干し椎茸の“石づき”、どうしていますか?】
皆さんは干し椎茸を戻したら、石づきの部分はどうしていますか?
「かさは使うけど、石づきは捨てちゃうなぁ…」という方、もったいないですよ!
中国では、かさと石づきを分けて売られていることもあります。
石づきからも美味しい出汁が出るので、佃煮など、その形や厚みを活かして歯応えを楽しむ料理に使いましょう☆
乾燥により、保存性もうま味もアップする“干し椎茸”。
皆さんも、ご家庭で活用してみてはいかがでしょうか?
Text by ろい/食育インストラクター