10月もあっという間に終わりを迎えようとしています。
山あいでは早くも紅葉が盛りを迎え、冬の訪れさえも感じるほどです……なんて浸っていると忘れがちになってしまいますが、これからの季節、街路樹の近くでは公害ならぬ香害が発生することもしばしば。
犯人はイチョウの実、銀杏!道端でうっかり踏んでしまったら滑るし臭いし…とあまり良い印象をお持ちでない方もいらっしゃいますが、食べてみるとなかなかクセになる味だったりもします。
今回はそんな銀杏にまつわるお話です。
【別名、生きた化石!?】
なぜ銀杏を食べるようになったのか?いつから食べるようになったのか?実はわかっていないんです。
というのも、イチョウの木自体が古代から(!)存在していた植物なので、本当の原産地すら定かではないのだそうです。
中国では紀元前から漢方薬の材料として利用されていた記録があり、大変古くから食べられていたのは間違いないようです。
日本には鎌倉時代くらいに中国から渡来したそうで、樹齢1000年を超える木も残されています。
日本での食用に限っては鎌倉時代以降ということになりそうですね。
【どうして茶碗蒸しに入っているの??】
茶碗蒸しには、必ずといっていいほど銀杏が入っていますよね。
これが楽しみという方もいらっしゃるのではないかと思います。
今では水煮の銀杏がいつでも手に入るとはいえ、季節外れでも加えている理由はなんなのか、気になったことはありませんか?これには諸説混在しているようです。
まず、茶碗蒸しのルーツにあたるのが、鎖国していた頃の長崎で生まれた卓袱(しっぽく)料理。
卓袱料理は今の時代でいうビュッフェに近く、たくさんの料理から自分で好きなものを選んで食べるという形式。
茶碗蒸しの原型も、その中の一品として提供されたのが始まりということですが、具材に関しては明記されていません。
その後、茶碗蒸しが最初に流行った時に具として入っていたのが銀杏だったのでそれを踏襲している、という説や、漢方薬の銀杏は喉や肺の調子を整える効果があるとされているので、病人食として提供されたなごりである、という説もあるようですが、明確に銀杏を入れなければならない理由というものは無いようです。
【銀杏諸注意】
そんな銀杏ですが、これからの季節では比較的安価…というより、銀杏拾いで山ほど手に入ることも珍しくありません。
あまり食べたことがないから使い方がわからない、という方は、そのまま煎って塩を振るだけでもほっくりした食感と鮮やかなグリーンの実の色が楽しめます。
殻ごと紙袋に入れて電子レンジで加熱するのが簡単ですが、蓋つきフライパンで煎っても香ばしさが増して美味しいものです。
それから、実を爪楊枝などで刺して素揚げにするのも、この時期ならではの逸品おつまみとして活躍してくれます。
殻を割る手間はありますが、水煮と比べると色合いも香りも食感も全く違います。
注意して頂きたいのは、銀杏の食べ過ぎ。
1粒が小さいのでたくさん食べてしまいがちですが、食べ過ぎで中毒によるケイレンを引き起こす場合があります。
特に子どもは大人に比べて肝臓機能が未発達なので、注意が必要。
さすがに1粒2粒なら問題ありませんが、季節のものとはいえ、お子様にたくさん食べさせるのは控えた方がいいですね。
いかがでしたか?
街路樹周りの悪臭のもと!ではありますが、新鮮なものの美味しさはついつい摘まみたくなってしまうものです。
おつまみにお料理に、秋の彩りを添える銀杏、ぜひ召し上がってみてくださいね。
Text by はむこ/食育インストラクター