「海老芋」が曲がった形をしている理由とは?

「海老芋」が曲がった形を している理由とは?

みなさん、「海老芋」をご存知でしょうか?
色は白く、ホクホクとして粘りのある食感と、良い香りを放つ海老芋は今が旬。
今回は、「海老芋」についてのお話です。

【海老芋と呼ばれるワケ】

海老芋(えびいも)は里芋の一種で、海老のような湾曲した形と縞模様から「海老芋」と呼ばれるようになりました。
別名を「京芋」「九条芋」といいます。
種芋を元に、親芋、子芋、孫芋、と兄弟が増え続けて行くので、子孫繁栄の縁起物としてお祝い料理の「鯛」と並んで海老=海の幸、海老芋=里の幸、として珍重されています。
海老芋の中にも種類があり、茎が赤いものが「唐芋(本海老)」、茎が青いもの(黄緑色のもの)が「女芋」と呼ばれています。

【手間をかけて育てられる高級品】

毎年4月から、芽の出た種芋を植え、半年かけて育てられます。
種芋を親に、子の芋、孫の芋と分かれて育つので、親芋と子芋を離すよう、間に土をいれる「土寄せ」を繰り返します。
土寄せは、根菜類の栽培で必要な作業で、加えて海老芋の場合は、土寄せによって圧迫された子芋をその名の通りの海老のような形にしてゆきます。
土の中が見えないだけに、きれいな形に育てるには熟練の技が求められるそうです。
土寄せだけでなく、水やりや除草作業など、さまざまな手間を惜しまず、時間をかけた丹精な仕事の積み重ねによって育てられます。
海老芋が高級食材といわれるワケに納得してしまいますね。


【海老芋と棒鱈はベストカップル】

京都ならではの料理のひとつとして、海老芋と棒鱈の炊き合わせがあります。
棒鱈(ぼうだら)とは、真鱈を固く乾燥させた乾物です。
北海道の名産品ですが、最大の消費地は京都で、江戸時代には北前船で運ばれてきたようです。
京都は海から遠く、鮮魚に恵まれなかったことから、魚介の乾物を使った料理が発展しました。
棒鱈は1週間から10日ほどかけて水でじっくり戻し、海老芋とたっぷりの煮汁でゆっくり煮含ませてゆき、手間暇かけて作られます。
ただ美味しいからというだけではなく、海老芋から出る灰汁(あく)には棒鱈を柔らかくするという性質があり、棒鱈から出る膠(にかわ)質が海老芋の煮崩れを防ぐという、ベストな組み合わせなのです。
京都には、この300年続く伝統料理の名「いもぼう」を冠した有名なお店があるほどです。

いかがでしたか?
最も消費されるのは京都ですが、一番の生産地は静岡県の磐田市なのだそうです。
私の出身地にちかく、馴染み深い食材のひとつでした。
里芋とは全く違った香りと食感は、冬のこの季節だけしか味わえない限定もの。
ぜひとも、海老のような形の「海老芋」を召し上がってみてくださいね!

Text by ナナちゃん/食育インストラクター