和菓子が好き、あんこが好きと宣言する方は少数派かもしれません。
確かにお饅頭やお団子を食べる機会は少なくても、「あんこ」を食べる機会は意外と多くありませんか?
古くて地味な食材として見られることもありますが、注目の成分を知って今年は「小豆あん」作りにチャレンジしてみませんか?
【小豆あんのルーツ】
小豆の原産地は東アジアだと言われ、日本へは3~8世紀の間に中国から伝わってきたと言われています。
その頃は小豆の赤い色に神秘的な力があると信じられていたことから、厄除けやお祝い事に使われており、その名残りが現在の赤飯や小豆粥だと考えられています。
「あん」は鎌倉時代に中国から伝わった「点心」がルーツで、中に肉が入っていたものを小豆で代用したことが始まりとされ、その当時はしょっぱい食べ物だったと言われています。
やがて砂糖が手に入るようになり、江戸時代頃には甘いまんじゅうを「砂糖まんじゅう」と呼んでいたようです。
【意外と知らない小豆のこと】
小豆は大きさによって、大納言とその他に分けられていて、一部地域では中納言や少納言も生産されています。
見た目で間違えやすいのは「ささげ」です。
ささげは端が角ばっているのが特徴で、身割れしにくく「切腹しにくい」ということにあやかり、関東では昔から赤飯に使われてきました。
学術上は、ささげはササゲ属ササゲ種、小豆はササゲ属アズキ種で、近い品種ですが異なる種です。
【美味しく楽しむために】
新物をよろこぶ日本人ですが、実は和菓子職人は新豆の小豆は選ばないそうです。
それというのも、新豆は皮が柔らかく、すぐに煮崩れてしまうし、風味が軽いと言われているためです。
でも、一般の方が煮るには、柔らかい分、すぐに煮えるので気軽に調理しやすいのではないでしょうか。
秋にスーパーへ行くと「新豆」と表示されていたものが売られているので、違いを楽しんでみませんか。
ご家庭の場合、小豆を水で洗い、ひたひたの水を入れ沸騰させます。
吹きこぼれに注意し、小豆が煮崩れないよう「ふつふつ」と沸く程度の火加減で10分程煮たら、一度湯を捨てます。
再度水を加えて加熱するという作業を好みで2~3回繰り返し、最後は柔らかくなるまで煮ます。
これは渋抜きや渋切りと言われる作業ですが、最近ではこれを行わず、そのまま柔らかくなるまで煮るレシピもあるようなので、すっきりした味がお好みの方は渋切りをして、簡単に調理したい方はそのまま煮てと、お好みで試してください。
指で軽く押して潰れるくらい柔らかくなったら、食べたい甘さの砂糖を加え、トロッとしてツヤが出るまで煮詰めます。
なお、加える砂糖は、乾燥した小豆に対して0.8~1.2倍量を目安にしてください。
【注目したい栄養】
小豆のゆで汁にはサポニンという成分が含まれています。
これは皮に含まれる成分で、コレステロールや中性脂肪を下げたり、高血圧を予防すると言われるほか、老化防止に役立つ抗酸化作用も期待できます。
さらに、疲労回復や糖質の代謝に欠かせない水溶性のビタミンB1も豊富に含まれているため、渋切りをせず煮た方が、より多くの栄養を摂り入れられます。
この他には、便秘解消に役立つ食物繊維が含まれていたり、カリウムが豊富なためむくみ対策になるなど、女性にうれしい成分が豊富に含まれているので栄養価に期待する時は渋切りをせず煮て、粒あんを楽しみましょう。
【小豆あんを作ったって、そんなに食べられるかしら?という方へ】
冷凍保存で2~3週間は持ちますし、例えば、バターを添えて「小倉トースト」にしたり、バニラアイスに熱々の小豆あんをかけてアフォガードみたいな「温冷スイーツ」を楽しむなど、定番のお汁粉以外のメニューも作ればあっという間に美味しくいただけます。
小倉トーストを木のプレートにのせ、アイスと小豆あんを“カワイイ”グラスに飾ってもいいですね。
また、旬の柿や白玉と一緒に食べれば、むくみ解消に効果的ですし、さつま芋と一緒に食べれば相乗効果で便秘解消に役立ちます。
伝統の「小豆あん」をアレンジして楽しんではいかがでしょうか。
Text by ゆず/食育インストラクター