今回のテーマは杏の実です。
果物のアンズの種の中にある仁と呼ばれる部分のことなのですが、こう書くとあまり馴染みのない食べ物だと思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、杏仁豆腐と聞けばいかがでしょう?
多くの方が召し上がったことのあるデザートなのではないでしょうか。
実はこの「杏仁」、中国では漢方薬の材料としてポピュラーな存在なのです。
今回はその秘密に迫ります。
【あんまり売られていない!?】
「杏仁豆腐はどこでも売っているけれど、杏の実が売っているのは見たことが無いよ」
そう思われる方も少なくないのではないでしょうか?
それもそのはず、杏仁豆腐に使われる杏仁霜(きょうにんそう)は高級食材の1つ。
スーパーなどでいつでも手軽に購入できる食材…とはいかないようです。
では、そんなに高価な食材を使っているのに、なぜスーパーやコンビニで簡単に購入できるデザートのなかに杏仁豆腐があるのか?
それは、杏仁霜の変わりに香りの似ているアーモンドエッセンスなどを使用しているため。
杏仁霜を使った本格的な杏仁豆腐だと、安価で販売するのは難しいのが実情のようです。
【杏仁豆腐は薬だった!?】
医食同源(この言葉自体は中国ではなく日本で作られたものですが、元になる考え方は中国を起源としています)の中国薬膳の世界では、杏仁霜は漢方の1つで、喉を潤し、咳を鎮める効果があるとされています。
そして、杏仁豆腐に欠かせないクコの実(ゴジベリー)は、抗酸化物質を豊富に含み、免疫力を高める作用があるため、喉を痛めて体調が良くない時には効果的な組み合わせ。
まさに相棒のような存在です。
また、杏仁霜は便通にも良い効果があるともいわれています。
食物繊維の豊富な寒天で作る杏仁豆腐は、こちらの効果も高めてくれる一石二鳥のレシピといえそうです。
香りはとても良く、身体に良いものの、そのままでは食べてもあまり美味しくない杏仁霜を美味しく食べるために生まれたのが杏仁豆腐だった、という説があります。
もともとの出発点は薬だったと考えると、食材の組み合わせが良いのも納得できますね。
これからの季節はエアコンの風で喉が乾燥してしまったり、必要以上に身体を冷やして便秘気味になることもあります。
杏仁霜を手に入れる機会があったら、本格杏仁豆腐作りに挑戦してみるのもいいかもしれません。
ただし、1つだけ注意点があります。
それは、加工されていないアンズの仁は有毒だということです。
買ってきたアンズから仁を取り出して自作するのは危険ですので、必ず販売されているものを使うようにしてください!
Text by はむこ/食育インストラクター