私が食べたあんこう鍋の中で、今でも忘れられないものがあります。
それはあんこうの肝を煮汁に溶かした「どぶ鍋」と呼ばれるもので、ドロドロした見た目なのに、一口食べると深いうま味とコクが広がるという美味しさのギャップが、鮮烈な印象として残っています。
【そもそも「あんこう」を知っていますか】
あんこうは深海魚で日本では北海道以南に、世界では太平洋や大西洋、インド洋などにも生息しています。
日本で需要が高まる冬期には世界中からあんこうが輸入されており、大きく成長するメスが主に流通します。
特に春の産卵前に栄養を蓄え肥大した肝が美味とされています。
通常、海底に生息するあんこうは、ほとんど動かず小魚やイカなどを食べています。
この時、マンガなどで描かれているように、顔先に誘引突起と呼ばれる背びれが変化した釣り竿のような部分をエサのように垂らし、砂の中に隠れています。
そして疑似餌のようにして、おびきよせた魚が近づいてきたら一気に丸のみしてしまうという生態をもちます。
【あんこうの「七つ道具」】
骨以外は全て食べられると言われており、切り分けた身を「だい身」、ひれを「とも」など7つの部位に分けて呼び、これらの部位を総じて「七つ道具」と呼んでいます。
卸すときは、あんこうの身がやわらかく表面がぬめっとしているため、まな板の上では作業しにくく、「吊るし切り」という手法で行います。
日本有数の水揚げ産地である茨城では、冬場のイベントのデモンストレーションとして披露されることもあるそうなので、職人技を見学しに行ってはいかがでしょうか。
【女性必見!食べて美味しい美容にうれしいお料理】
あんこう料理ですぐに思い浮かべるのは、居酒屋にある「あん肝ポン酢」ではないでしょうか。
“おじさま”の酒のアテと思わず栄養価をみていきましょう。
まず、「あん肝」にはビタミンAが含まれていて皮膚や粘膜を丈夫にするほか、老化防止につながる抗酸化作用もあります。
ビタミンEも豊富に含まれていて同じく抗酸化作用があるほか、血行をよくする働きがあるため、美肌に欠かせない成分と言えるでしょう。
血行をよくするということは、肩こりや冷え性にも効果的で、体を温める生姜と組み合わせた生姜醤油を「あん肝」にかけて食べるのがおすすめです。
また、抗酸化作用の相乗効果を狙って、ビタミンCが豊富なゆずを絞って作ったフレッシュな「ポン酢」でいただくのもいいですね。
この他にも葉酸やDHAなど近年注目の栄養成分も含んでいます。
一方、身は水分量が多く脂質が少ない低カロリー食材です。
しかも、たんぱく質の基であるアミノ酸を含んでいるため、美肌を目指す人にもしっかり食べていただきたい食材です。
色々な料理で美味しくいただけますが、やはり「七つ道具」のうま味や栄養が溶け出た汁ごと食べる鍋が一番のおすすめ料理です。
冬場の肌荒れが気になる季節に旬を迎えた『あんこう鍋』を美味しくいただき、さらに乾燥や寒さに負けないお肌を目指しましょう。
Text by ゆず/食育インストラクター