今では高級食材として知られ、貝の王様とも言われる「アワビ」。
なかなか、お家で調理することの無い食材ではありますが、夏に旬をむかえ、今の季節になるとデパートや専門店でよく見かけるようになります。
今回は、縁起のよい食材としても知られる、今がおいしいアワビについてのお話です。
【古くから縁起物として知られる「アワビ」】
アワビは二枚貝の片方の殻が無くなったような見た目ですが、二枚貝ではなく、巻貝の仲間です。
縄文時代の貝塚からアワビが発見され、そのころにはすでに食用として食べられていたと言われるほど、古くからある食材のひとつです。
また、古来より日本の神事や慶事に欠かせないもので、天皇家や伊勢神宮への奉納品という意味で、別名「御貝(オ(ン)ガイ」とも呼ばれています。
さらに、アワビを加工して出来る「熨斗鮑(のしあわび)」は、寿命を「延ばす(のす)」、敵を「のし」倒すに通ずることから縁起物としても扱われ、お祝いなどに用いる「熨斗」の原型となっています。
アワビは、高級食材としてだけではなく、特別な食材でもあったのですね。
【アワビの種類】
生で食べるとコリコリ、加熱するとやわらかな食感が楽しめるアワビ。
現在、アワビの仲間は世界中で約100種と言われていますが、日本で獲れるのは、「クロアワビ」、「エゾアワビ」、「メガイアワビ」、「マダカアワビ」の4種類だけです。
アオガイ、オガイとも言われるクロアワビとエゾアワビは、身が締まっているのが特徴で、刺身や生食向きとされています。
メガイアワビとマダカアワビは、アカガイ、メガイとも言われ、身がやわらかいので、蒸し物や煮物などの加熱調理に適しています。
アワビは、11月ころに産卵期をむかえますが、それに備え、8月ころから栄養を蓄え、身が太り、栄養が増して行きます。
冬の食材と思われがちですが、夏に旬をむかえる食材です。
【アワビの選び方と保存方法】
なかなか、購入する機会は少ないと思いますが、指で押したときに身が締まるもの、身に傷がなく肉厚なものを選ぶようにしましょう。
日持ちしないので出来るだけ購入したその日のうちに食べきるようにします。
調理する前には、身に適量の塩を振り、タワシなどで表面をしっかりこすって汚れを落とし、水洗いしてから殻を外します。
加熱する場合は、洗ったら殻をはずさずに、酒を振って2時間程度ゆっくり蒸すことでやわらかな仕上がりになります。
身と殻を外すときには、木杓子などの平らなものをさし込み、肝を傷つけないよう気をつけながら外してください。
どうしてもその日に食べられない場合には、汚れを落としたあとに、塩水で濡らした新聞紙に包み、深さのあるバットなどにのせて冷蔵庫へ。
それでも、翌日には食べるようにしましょう。
【アワビの嬉しい効能】
高たんぱく・低脂肪・低エネルギーと、ダイエット中の方にもおすすめの貝類です。
ほかにも、タウリンの含有量は魚介類の中でトップクラス。
肝機能を強化して二日酔い予防に役立つほか、コレステロール値を下げたり、血圧を安定させる働きがあります。
また、ビタミンB12も含まれ、ビタミンB6や葉酸の多い食材と合わせると貧血予防につながります。
さらに、コラーゲンも多く含まれるので、美肌にも効果が期待出来ます。
【干しアワビはおいしいだけでなく、栄養もアップ!】
アワビをゆでて、乾燥させた干しアワビは、中国料理に欠かせない食材で、「ツバメの巣」、「フカヒレ」と並び、中国では三大食材のひとつとされています。
特に、日本(東北地方)で作られる干しアワビは、最高級品として扱われ、大変高価で貴重なものです。
干すことでうま味が凝縮されるだけでなく、栄養面もアップします。
アミノ酸の一種であるアルギニンやカルシウムの量が増え、美肌効果や滋養強壮、骨粗しょう症予防にも役立ちます。
お家で調理して食べることは、なかなか無い食材かもしれませんが、今がおいしい季節ですので、ぜひ、食べる機会があれば、旬の味を楽しむのもよいかもしれませんね。
Text by まち/食育インストラクター