味噌汁、煮物などによく使われる「麩」。
全国各地にいろいろな種類のお麩がありますが、どんなものがあり、どのように作られているかご存知ですか?
【麩の歴史】
麩の原形は、中国の「麪筋(めんちん)」であると言われています。
麪筋とは、小麦粉を水で練ったあとにでんぷんを水で洗い流した、弾力と粘りのあるたんぱく質(グルテン)の塊のことで、麪は小麦粉を表しています。
この麪筋が日本へ伝わったのは、南北朝時代または室町時代に中国に留学した僧が持ち帰って精進料理に取り入れたことからと言われています。
しばらくの間は寺院や宮中でのみ作られていたので、神社やお寺が多く、御所のある京都を中心に発展していきました。
その後、桃山時代に入ると麪筋を焼いた「ふの焼き」という菓子が登場し、千利休が催した茶会によく登場していたようです。
江戸時代になると、麩を製造する「麩師」が誕生し、麩が全国に広まり、その土地にあった製法があみ出されて行きました。
【麩の種類】
麩は小麦粉に水を加えてよく練り、熟成させてからでんぷんを水で洗い流し、小麦粉からたんぱく質(グルテン)だけを取り出します。
このグルテンに小麦粉やもち粉を加えて加工したものが麩です。
麩は「焼き麩」、「生麩」、「揚げ麩」の3種類に大きく分けられます。
焼き麩はグルテンに小麦粉を加えて焼いたもので、棒に巻いて焼いた「車麩」、板状の「板麩」などがあります。
生麩は、グルテンにもち粉を加え、蒸したりゆでたりしたものです。
「よもぎ麩」や「あわ麩」のほか、もみじや桜などをかたどったものもあります。
揚げ麩はグルテンに小麦粉を混ぜて揚げたものです。
「油麩」、「仙台麩」とも呼ばれています。
このほかにも全国各地には、たくさんのお麩があり、その数100種ほどとも言われています。
【代表的な焼き麩】
●車麩
車麩はグルテンに小麦粉を混ぜて焼いたものです。
作り方は、棒に生地を巻き、焼いては生地を重ねを繰り返し、焼き上げます。
歯ごたえがあり、煮崩れしにくいのが特徴で、すき焼きや煮物などに向いています。
●板麩
生地は車麩と同じでグルテンに小麦粉を混ぜたものです。
作り方は、棒に生地を巻きつけて丸く焼き上げたあと、つぶして板状にします。
主に山形県や秋田県で作られ、「庄内麩」とも呼ばれています。
独特のこうばしい香りが特徴で、そのまま砕いてお味噌汁に入れたり、形状を生かしてピザにしたりといろいろな料理に使えます。
●観世麩
棒状に焼いた麩を小口切りにしたもので、ふわっとした軽い食感が特徴です。
切り口が観世水のように渦を巻いていることからこの名がついたと言われています。
小町麩とも呼ばれ、一般的によく使われているお麩です。
【ちくわ麩はお麩の仲間!?】
関西の方はなじみがないかもしれませんが、関東ではおでんの種として知られる「ちくわぶ」。
名前に「ふ」とついていますが、ほかの麩とは異なる食感なので「麩ではないのかも?」と思う方もいるかもしれません。
しかし、ちくわぶもグルテンに小麦粉を加えて混ぜ、ちくわ型に入れて蒸し上げたものなので、生麩に分類される麩の一種です。
もちもちとしたコシが特徴で、おでんだけでなく煮物はもちろん、焼いてみたらしあんをかけ、お団子風にして食べるのもおいしいですよ!
【お麩があまったら…。おやつに大変身!パンプディング風】
安いからとついつい大袋で購入してしまい、「使い切れない…」といったことはありませんか?
今回は手軽に作れておやつにぴったりな、小町麩を使ったパンプディングのレシピをご紹介します。
<材料(2人分)> 調理時間:30分
小町麩・・20個くらい
卵・・2個
グラニュー糖・・大さじ3
牛乳・・150ml
バニラオイル・・適量
粉砂糖・・適量
<作り方>
- ボウルに卵を割りほぐし、グラニュー糖を入れて混ぜ合わせる。
牛乳・バニラオイルを入れてさらによく混ぜる。 - 耐熱容器にバター(分量外)を塗り、小町麩を並べる。
半量の(1)の卵液を流し入れ、10~15分程度おき、麩にしっかりとしみ込ませる。
※必要に応じて途中で麩を裏返し、まんべんなく卵液をしみ込ませてください。 - 卵液がすべて麩の中に入ったら残りの卵液を注ぎ、上からたっぷり粉糖をふる。
- 温めておいたトースターに(3)を入れ、表面がふっくらとし、こんがりとした焼き色がつくまで10~15分焼く。
※途中で焦げそうな場合には、アルミホイルをかぶせてください。オーブンの場合は、200℃で20分程度焼いてください。
お好みでメープルシロップをかけてもおいしいですよ。
語呂合わせから、協同組合全国製麩工業会によって2月2日は「麩の日」に制定されました。
もともとは精進料理として親しまれていたお麩ですが、形も食感もさまざまで和食だけでなく、ほかの料理やスイーツにも活用できます。
ぜひ、この機会にお麩料理を楽しんでみてはいかがでしょうか。
Text by まち/食育インストラクター