楽器の琵琶に似ていることからこの名がついたと言われている「びわ」。
ほどよい甘みと酸味が魅力的な、5~6月の初夏が旬のフルーツです。
【びわは寒さに弱い!?】
びわは古くから日本に自生していた果物ですが、在来種は小ぶりで種が大きく、あまりおいしくなかったことから、当時は普及しなかったようです。
現在栽培されているものは在来種ではなく、江戸時代後期ごろに中国から伝えられた品種が元になっています。
寒い気候で育ちにくいびわは、長崎県で最も多く栽培され、そのほかに千葉県、鹿児島県、香川県などで作られています。
本来の旬は5~6月ころの初夏ですが、今ではハウス栽培などの技術も進歩し、早いものだと2月ころから出回っています。
【びわの代表的な品種】
●茂木
江戸時代に中国の商船から持ち込まれた唐びわの種子を、長崎県の代官屋敷で奉公していた女性が茂木の実家にまいたものから生まれた品種です。
長崎県をはじめ、鹿児島県、香川県で多く栽培されています。
ほかの品種に比べるとやや小ぶりですが、甘くて果汁が多く、酸味がひかえめなのが特徴です。
3月~6月ごろまで出回ります。
●長崎早生
「茂木」と「本田早生」を交配させた早生の代表的な品種です。
寒さに弱いため、ハウス栽培されることが多く、ほかの品種より1~2か月早く店頭に出回ります。茂木より少し大きくて甘みが強いのが特徴です。
鹿児島県や長崎県で多く栽培されています。
●田中
植物学者である田中博士が長崎県から持ち帰った種を、東京の自宅にまいて育成したのがはじまりと言われています。
比較的寒さに強く、千葉県など「茂木」の生産が安定しなかった地域で定着しました。
大粒で甘みと酸味のバランスがよい品種です。
愛媛県や千葉県で多く栽培され、6月ごろにシーズンを迎えます。
●大房
寒さに強いため、びわ産地の北限と言われる千葉県の富浦町で多く栽培されています。
大粒で果肉はややかたく、ほどよい甘みと酸味が特徴です。
5~6月ごろに出回ります。
このほかにもさまざまな品種のびわが栽培され、最近では種なしのびわも生産されています。
【おいしいびわの選び方】
全体にハリがあり、濃いオレンジ色のもの、ずっしりと重く、左右対称のふっくらとした形のものを選ぶとよいでしょう。
果皮にブルームと呼ばれる白い粉がみられ、細かい産毛で覆われているものが良品です。
びわは傷みやすく、追熟する果物でもないので、長期保存には向いていません。
店頭に並んでいるものが食べごろの状態なので、食べたいときに購入し、その日のうちに食べきるのがベスト。
もし、食べきらない場合には、直射日光を避けた、風通しのよい涼しい場所で保存し、2~3日を目安に食べきるようにしましょう。
びわは低温に弱い果物で、冷やし過ぎると風味が落ちてしまいます。
食べる2~3時間前に冷蔵庫に入れて冷やすのがおすすめです。
【びわの嬉しい効能】
びわは、「β-カロテン」や「β-クリプトキサンチン」が豊富です。
これらは体内でビタミンAに変わり、皮膚や粘膜を健康に保ってくれます。
また、強い抗酸化作用により、高血圧やがんの予防にも効果が期待できます。
そのほか、余分なナトリウムを排出し、むくみや高血圧予防に働く「カリウム」や老化やがん予防に役立つポリフェノールの一種「クロロゲン酸」が含まれています。
クロロゲン酸は皮や種のまわりに多く、脂肪の蓄積を抑える働きもあります。
さらに、古くから果実だけでなく葉も利用されおり、江戸時代には「枇杷葉茶」として飲まれていたそうです。
現在は、お茶のほか、生薬として漢方に配合したり、化粧水として用いられていたりと広く活用されています。
びわの葉は、咳止めや鼻づまり、むくみ改善、あせもやかぶれなどの皮膚疾患などに有効とされています。
皮をむくだけで手軽に食べられるびわは、これから暑くなる季節の水分補給にもおすすめです。
ぜひ、そのままで食べていただきたいですが、たくさん手に入って食べきらないときは、コンポートにして楽しむのもよいですね。
Text byまち/食育インストラクター