爽やかな香りとしびれる辛みが魅力の「山椒」の話。

爽やかな香りが食欲を刺激する、和食に欠かせないスパイス「山椒」。
若葉や花、実、皮などすべての部分が利用され、それぞれが違った使い方で楽しまれています。

【意外と古い!?「山椒」の歴史】

山椒は日本原産のミカン科サンショウ属の植物です。
縄文時代の遺跡の中から山椒の入った土器が出土していることから、古くから利用されていたと考えられ、日本最古のスパイスとも呼ばれています。
しかし、現在のように香辛料として使われていたかは定かではないようです…。
では、一体いつごろから今のように香辛料として使われるようになったのでしょうか?
それは、「日本書紀」や「倭名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)」などに記されていることから、奈良時代~平安時代には、香辛料として広く普及していたのではないかと考えられています。
また、これまでは山椒の別名である「ハジカミ」という言葉が多く使われていましたが、江戸時代前半になると「山椒」という呼び名が定着して行きました。

【季節によって呼び名いろいろ!】

はじめにも少し触れましたが、山椒は若葉・花・実・皮など、すべての部分が利用されているスパイスです。
3~4月ごろに出てくる香り高い若葉は「木の芽」と呼ばれ、吸い物の吸口や木の芽みそなどによく使われます。
そのあと、4~5月ごろに咲く黄色い花は「花山椒」、そのあとに出てくる青い実を「実山椒、青山椒」と呼んでいます。
花山椒は料理のあしらいや佃煮などに使われ、実山椒はちりめん山椒や佃煮にしてよく食べられています。
さらに秋ごろになると実が十分に熟し、裂けて種子がはじけます
これを「割り山椒」と呼び、そのはじけた外皮を乾燥させ、粉末にしたものが蒲焼きにかけたり、七味唐辛子に使われる「粉山椒」です。
そして食べるだけではありません。
ごまなどの食材をすりつぶすときに使用する「すりこ木」は、山椒の木が適していると言われ、多く利用されています。


【ピリリとした辛みのもとは?】

山椒のピリリとした舌がしびれるような辛みは、「サンショオール」によるものです。
サンショオールは青山椒に最も多く含まれ、大脳を刺激し、内臓器官を活発にさせる働きがあります。
それにより胃腸の機能を高め、消化不良や食欲減退などの改善に効果が期待できます。
また、代謝を促し、発汗作用もあるため、冷え性にも有効です。
山椒特有の香りは「シトロネラール」、「ジテンペン」、「ゲラニオール」などの精油成分によるもので、胃腸の調子を整えたり、体を温めてくれます

【木の芽の香りをより楽しむには?】

爽やかな香りと刺激的な辛みが特徴の山椒ですが、木の芽はそれほど強い香りを持っていません。
これは、葉の組織中に香り成分が閉じ込められているためです。
木の芽の香りをより楽しむためには、使う前に手のひらでパンと叩いて組織を壊し、外に香り成分を出すとよいでしょう。

【見ためは似ているけれど…】

中国料理で使われる「花椒(ホワジャオ)」
その見ためは日本の山椒に似ていますが、種類が異なり、山椒より辛みが強いのが特徴です。
日本の山椒と区別するために、「四川山椒」や「中国山椒」などと呼ばれることもあります。
中国のミックススパイス「五香粉(ウーシャンフェン)」に欠かせないスパイスで、麻婆豆腐はもちろん、炒め物や揚げ物などさまざまな料理に使われます。
花椒を粉末状にして塩と合わせ、鶏の唐揚げやフライドポテトにまぶすと、いつもと違う味が楽しめるのでおすすめです。

「山椒は小粒でもピリリと辛い」という言葉があるほど、その小さな粒には驚くきパワーが秘められています。
ほんの少し加えるだけで料理の味を引き立ててくれる山椒。
さまざまな料理で楽しんでみてはいかがですか?

Text byまち/食育インストラクター