今回、ご紹介する郷土料理は、高知県の鰹のたたきです。
鰹漁で有名な高知県では、年間を通して鰹が食べられています。
とくに9月は、北の海で過ごした鰹が黒潮に乗って太平洋を南下するので、鰹漁が最盛期を迎えます。
【全国一の消費量】
高知と言えば鰹のたたき、というほど有名ですが、実は、消費量は日本一ですが、漁獲量は一番ではない(!)のです。
その理由は、高知県では鰹の一本釣りが盛んだからです。
鰹漁では巻き網漁が一般的で、一度にたくさんの鰹が獲れます。
しかし、網の中で追い込まれた鰹同士が衝突して傷ついたり、死んでしまって状態が悪くなるなどのデメリットがあります。
漁獲量が多くなる分、安価で鰹が食べられるのは嬉しいことですが、おいしさの面では見劣りしてしまうのですね。
一方、一本釣り漁なら、鰹を必要以上に傷つけることなくよい状態をキープできます。
巻き網漁ほど簡単ではなく、量も獲れませんが、味は抜群においしくなります。
高知県の鰹のたたきがおいしいと言われるのは、素材の鮮度を保つための漁法が守られているからなのです。
鰹のたたきの発祥についても、もとは漁師さんが傷みやすい鰹をおいしく食べるために工夫した漁師飯が始まりのようです。
釣った魚を無駄にせずおいしく食べるという考え方が、高知の鰹を特別な存在にしたのかもしれませんね。
【家庭ごとの味】
鰹に並ぶ高知県の特産と言えば、生産量日本一の柚子が有名。
鰹のたたきにかけるポン酢にも、柚子が入っていることが多いです。
しかし、温暖な気候の高知県では、柚子だけではなく多種多様な柑橘系の栽培に適していて、いつでも採れたての柑橘が手に入ります。
そのため、ポン酢には柚子だけではなく、季節ごとに好みの柑橘の果汁を入れて、自家製の味を楽しむご家庭も多いそう。
たたきはとてもシンプルな調理法ですが、高知の鰹のたたきは店ごと・家庭ごとに味や香りに違いがあるといわれます。
鰹以外の農産物の生産も盛んな環境が、強く影響しているからなのでしょう。
【フライパンでつくる鰹のたたき】
<材料> 調理時間:35分
鰹・・1柵
粗塩・・適量
サラダ油・・小さじ1~2
玉ねぎ・・1/2個
小ねぎ・・1/2束
にんにく(スライス)・・1かけ分
しょうが(おろし)・・1かけ分
Aしょうゆ・・50ml
A酢・・大さじ2
Aお好みの柑橘果汁・・大さじ1
A昆布・・1g
A鰹節・・3g
<作り方>
- ポン酢を作る。
Aを合わせ、1~2時間置く。ザルでこして昆布と鰹を除く。 - 鰹は血合いを取り除き、粗塩を皮目に振って5分おく。
- 玉ねぎはスライスし、水に10分ほどさらしてザルに上げる。
小ねぎは小口切りにする。 - フライパンにサラダ油を熱し、中火で(1)を皮目から焼く。
こうばしい焼き色がついたら裏返して50秒~1分焼き、氷水にとる。 - (4)の粗熱がとれたらペーパータオルで水気をふき取り、1cm厚さのそぎ切りにする。
- 器に盛り、(2)・にんにくをちらし、しょうがを添える。ポン酢をたっぷりかけていただく。
<ポイント>
・お好みで揚げなす、みょうがなどを盛り合わせると、より豪華に仕上がります。
お店では炭や藁(わら)で焼き上げて風味をつけたものを提供することがありますが、家庭では扱いが難しいので、手軽にフライパンで焼くレシピです。
薬味はシンプルな内容でご紹介していますが、高知ではポン酢と同じく薬味も家庭ごとに違うものなので、お好みでアレンジしてみてください。
鰹は年間を通して釣れる魚ですが、やはり9月の戻り鰹は特別なおいしさです。
お好みの柑橘の香るポン酢と合わせて、この時期ならではの一皿をお楽しみください☆
Text byはむこ/食育インストラクター