愛のりんご?赤いナス?トマトをめぐるあれこれ

サラダや煮込み料理・炒め物、もしくはそのままかぶりついてもおいしく食べられる人気野菜のトマト。
スーパーや青果店では必ず並んでいるぐらい、私たちの暮らしになくてはならない野菜のひとつです。
今回はそんなトマトのお話です。

【赤いナスにご用心!?】

トマトはアンデス山脈が原産とされ、アメリカ大陸の発見以後、ヨーロッパに広まりました。
日本は江戸時代に持ち込まれていたようで、当時はトマトではなく、赤茄子と呼ばれました。
トマトはナス科の植物なので、こう名づけられたのもうなずけます。
ところが、当時のトマトは食用ではなくあくまで観賞用で、実の部分は毒があると考えられていました
現代のおいしいトマトを知る私たちからすると、もったいない!と思いたくなりますね。
でも、トマトが有毒だと考えていたのは日本だけの話ではありません。
実はヨーロッパでも始めは有毒植物だと考えられていました。
これは、ヨーロッパに自生するナス科の植物に、ベラドンナという有毒草があり、この実がトマトと似ていたのです。
実際、トマトも葉や茎は有毒なので、トマトの実も同じように有毒と考えられてもおかしくはありません。
トマトが観賞用から食用に変わるまで、かなりの時間が必要でした。
ヨーロッパでの食用化は18世紀ぐらいからとされ、品種改良が進むとともに一般化していきました。
キャベツなどと比べると、ずっと歴史の浅い野菜だといえるでしょう。
日本で食用化されたのは明治時代以降、大体19世紀ぐらいと考えると、たった100年ほどの間で、世界中に広まったといえます。


【トマトが赤くなると…?】

トマトの食用化が進むと、多くの国でその評価が一転しました。
フランスでは愛のリンゴ(ポム・ダムール)イギリスでもラブ・アップルと呼ばれることがあり、一説には惚れ薬のように愛を育む効果があると考えられていたことがあるようです。
そのほかにも、ヨーロッパではしばしば、価値のあるものをリンゴに例えることがあり、イタリアでは黄金のリンゴ(ポモドーロ)と呼ばれます。
リンゴに関わる別名がつけられるようになったことから、トマトが毒の実扱いから大躍進したことがわかります。
さらには、「トマトが赤くなると医者が青くなる」…なんてことわざも生まれるほど、体によいものだという認識に変わりました。
今では世界中でトマトが食べられており、生産量は玉ねぎやキャベツなどとともに、世界トップクラスの仲間入りをしています。

【トマトの赤の秘密】

トマトと言えば?と聞かれたら、真っ赤でツヤツヤの果実をイメージする方が多いと思います。
この真っ赤な色のもとになるのが、リコピンという色素です。
強い抗酸化作用があり、活性酸素が体に与える害から体を守る効果が期待できます。
脂質異常症などの生活習慣病のリスクが気になる方は、意識して摂るとよいですね。
また、活性酸素は肌荒れや日焼けによるシミなどの原因にもなるので、お肌の調子をよく保ちたい!と思われる方にも、トマトはおすすめの野菜です。
リコピンは皮の部分に多く含まれているので、料理で使うときは皮も一緒に調理するとよいですね。
また、リコピンは脂溶性なので油脂と一緒に食べると吸収率が上がります
サラダなどで食べるときは、油を使ったドレッシングでいただくとよいですね。

毒草から一転、世界的にメジャーな野菜になったトマト。
太陽をいっぱい浴びて育つ夏は、トマトが最もおいしくなる季節です。
今ではいろいろな品種が栽培されているので、食べ比べなどで楽しむこともできます。
ぜひたくさん召し上がって下さいませ☆

Text by はむこ/食育インストラクター