アスパラガスとアスパラギン酸の秘密

棒のようにまっすぐ伸びた姿は、一見すると葉なのか茎なのか、それとも別の部位なのか?
今回はそんな不思議な野菜、アスパラガスについてのお話です。

【まっすぐ伸びる不思議な野菜】

一本のまっすぐ伸びたアスパラガスの姿は、ほかの野菜にはないユニークさがありますよね。
この形はなんとなく茎の部分に近い印象をうけますが、実は、私たちが「アスパラ」と呼んでいる部分は若芽なのです。
アスパラガスはユリ科の野菜で、茎にあたる部分は土の中に広がっています(地下茎)。
ユリ科のほかの野菜には地下に埋まっている部分を食べる玉ねぎやにんにくがいるので、アスパラガスが地下茎を持っているのも納得できるかも…?
ちなみに、アスパラガスの地下茎は食用に適さない部位です。
やわらかいのは地上に出ている部分だけなのです(それでも地面に近い部分はかたくて皮をむかないと食べにくいのですが)。


【アスパラガスから発見・アスパラギン酸】

アスパラガスの原産はヨーロッパとされ、古代ギリシャの時代には栽培が試みられていたという古い歴史があります。
当時から滋養強壮の妙薬のように考えられていました。
そのため、ヨーロッパの王侯貴族たちが好んで食べた野菜として記録に残されています。
そんなアスパラガスの栄養価ですが、実際のところはどうなのでしょう?
多く含まれる栄養素には、骨を丈夫にするビタミンKや血行促進に働くビタミンE、血液をつくる葉酸などがあるものの、ほかの野菜と比較したときに特別多いというわけでは無いようですが…?

実は、アスパラガスには一つ、特徴的な栄養素があります。
それがアスパラギン酸
名前からしてアスパラガスと関係が深いことがうかがえますが、それもそのはず。
アスパラギン酸はアスパラガスから発見された成分です。
アスパラギン酸はアミノ酸の一種で、カリウムやカルシウム・マグネシウムなどのミネラルを細胞内に運ぶ働きをします。
特にマグネシウムはエネルギーを生み出す代謝に関わる栄養素で、体温の維持やホルモンの分泌に役立っています。
こうなると、アスパラガスが滋養強壮によいと考えられていたことは、ただの迷信とは言えなさそうです。
もう一つの特徴として、利尿作用があることが挙げられます。
有害なアンモニアは体の中に蓄積されると神経伝達の働きを阻害してしまうので、早めに尿として排出したい物質です。
アスパラギン酸はアンモニアの排出を助けてくれるので、体の健康を守ってくれているといえそうです。

そのほか、アスパラギン酸はうま味成分でもあります。
つまり、アスパラギン酸を多く含むアスパラガスは成分的にもおいしい野菜なのです。
うま味は塩味を引き立たせる効果があるので、さっと火を通したアスパラガスにちょっと塩をふったシンプルな調理法でも十分においしく食べられます☆
ただし、アスパラギン酸は熱に弱い性質があるので、加熱時間を短くした方がアスパラガスそのものの味をより楽しめて、栄養も無駄なく摂れます。

アスパラガスの秘密について、いかがでしたか?
アスパラガスは若芽の部分なので、収穫した後もぐんぐん伸びて成長しようとします。
そのために栄養をどんどん使ってしまうので、購入したら2~3日のうちに食べきるようにしてください!
長期保存はせずに、おいしい季節に食べてくださいね!

Text byはむこ/食育インストラクター