子どもの成長を助ける栄養素⑥~子どもの貧血で注目される「鉄」

子どもの成長を助ける栄養素⑥~子どもの貧血で注目される「鉄」

子どもの健やかな成長のためには、十分な栄養を摂ることがとても大切です。
そこで「子どもの成長を助ける栄養素」では、成長に必要な栄養と食材についてシリーズでご紹介していきます!
今回のテーマは「子どもの貧血で注目される鉄」です。

【鉄とは

血液中の赤血球には、体内の組織に酸素を運搬するという大切な役割を担っているヘモグロビンが存在します。
この主原料が「鉄」で、必須ミネラルのひとつになっています。
体内の鉄は大きく2種類に分かれ、約70%が酸素を実際に運ぶ働きをする「機能鉄」、残りの30%が、肝臓・膵臓・骨髄・筋肉などに蓄えられる「貯蔵鉄」です。
通常体内で使われるのは機能鉄ですが、不足するとたくわえている貯蔵鉄を使って補います。

【機能鉄を使い切り、貯蔵鉄も使い切ってしまうと…

体内の鉄ストックがなくなり「鉄欠乏性貧血」に陥ります。
血液中が酸欠状態になるので、動悸や息切れ、食欲不振、集中力の低下や頭痛などを引き起こします。
成長期の子どもや月経のある女性は欠乏しやすくなるため、子どもだけでなくママにも注意が必要です。

また、近年、赤ちゃんの鉄欠乏貧血が問題になっています。

【赤ちゃんにも!?

母乳に含まれる鉄は出産後から徐々に減っていき、生後6ヵ月では初乳の半分に!
特に離乳期になっても離乳食が進まず、9ヵ月以降も母乳中心の生活を続けていると鉄が不十分なために鉄欠乏性貧血にすすむことがあります。
厚生労働省の「授乳・支援ガイド」にも鉄の不足には十分配慮するよう記載されています。
また、鉄欠乏や鉄欠乏性貧血は赤ちゃんの脳や神経系の成長に悪影響を及ぼすという研究報告があります。
長い間、極端に鉄が不足すると、知能の発達に深刻な影響が出る恐れもあり、その影響は13歳ごろまでとり戻せないという報告も!
脳神経の発達の遅れは、歩行などの運動機能にもあらわれるため、鉄をしっかり摂ることが大切です。


【鉄を過剰に摂りすぎると…

鉄は体内に吸収されにくい栄養素なので、普通の食事で摂りすぎることはまずありません
ただし、サプリメントなどで過剰に摂り過ぎると肝臓に障害を生じ、成人では鉄沈着症、幼児の場合は急性鉄中毒を起こします。
親が処方されている鉄製剤を、子どもが誤って飲んでしまうケースも報告されているようなのでお気を付けください!!

【鉄の多い食品は?】

鉄は動物性食品に含まれる「ヘム鉄」と植物性食品に含まれる「非ヘム鉄」の2種類があります。
それぞれの鉄が多く含まれるものを下記にまとめてみました。

〇ヘム鉄

  • 豚レバー、鶏レバー、牛レバー
  • 牛赤身肉
  • しじみ、あさりなどの貝類
  • かつお、まぐろ、煮干しなど

〇非ヘム鉄

  • 納豆
  • 菜の花、小松菜、ほうれん草、大根の葉
  • 枝豆など

また、一度にたくさんは食べられませんが、ごまや海苔なども鉄が豊富です。

【効率のよい食べ方は?

鉄は体内への吸収率が低く、ヘム鉄と非ヘム鉄を比べるとヘム鉄は10~20%、非ヘム鉄は2~5%です。
鉄は、良質なたんぱく質やビタミンCを多く含む食品と一緒に摂ることで、体内への吸収率がアップします。
また鉄製の調理器具を使うと、調理中に鉄が食材にしみ込み、鉄量がアップします。
鉄は水溶性なので、ゆでたり煮たりするとゆで汁や煮汁に溶け出します。
みそ汁やスープなど汁ごと食べられる料理にすると無駄なく摂取できます。
一方、赤ワインや緑茶に多く含まれるタンニンやコーヒーに含まれるカフェインは、体内で鉄と結合して吸収を阻害する作用があります。
子どもたちは飲んだりすることはないと思いますが、大人には気を付けたいポイントですね!
鉄を工夫して摂るように心がけましょう。

いかがでしたか?

鉄は、血液の成分になるとても大切な栄養素です。
だからといって鉄だけを摂っていればよいわけではありません。
さまざまな食品を組み合わせて、たくさんの種類の栄養素を体内に取り込むことが、子どもたちの健やかな成長へのカギとなります。
バランスのよい食事と規則正しい生活を送り、適度な運動を心がけましょう。

Text by くまこ/食育インストラクター