妊娠中は、特に「鉄」が不足しがち。
鉄は体の中で血液の材料となり、血液中の鉄が全身に酸素を運びます。
おなかの赤ちゃんへ栄養を送るための重要な栄養素です!
【鉄が不足すると…】
「鉄欠乏性貧血」になります。
赤血球に含まれるヘモグロビンの量が減少して体が酸欠状態になり、疲れやすくなったり、めまいや立ちくらみ、動悸、息切れ、耳鳴り、食欲不振などの症状が現れます。
【鉄が多く含まれている食品】
食品に含まれる鉄には、「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」があります。
「ヘム鉄」はレバーや赤肉、赤身の魚などの動物性食品に多く含まれ、「非ヘム鉄」は野菜や豆、大豆製品など植物性食品に含まれています。
それぞれ多く含まれる食品をまとめてみました。
○ヘム鉄(食材100gあたりの鉄量)
・※豚レバー 13.0mg
・※鶏レバー 9.0mg
・※牛レバー 4.0mg
・牛赤身肉 1.7~2.9mg(部位により変動)
・しじみ 8.3mg
・いわしの丸干し 4.4mg
・あさり 3.8mg
○非ヘム鉄(食材100gあたりの鉄量)
・納豆 3.3mg
・大根の葉 3.1mg
・菜の花 2.9mg
・小松菜 2.8mg
・えだまめ 2.7mg
※レバーは鉄のほかに、「レチノール」というビタミンAも多く含まれています。妊娠中の鉄の補給源がレバーに偏ると、ビタミンAの過剰摂取につながり、体調を崩す恐れがあるため、適度な摂取を心がけましょう。ちなみに野菜に多いβ‐カロテンは体内に必要な分だけビタミンAに変換されるので、摂り過ぎても心配ありません。
【効率よく鉄を摂るためには?】
実は「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」、体内での吸収率が大きく違います。
「ヘム鉄」の吸収率が約20~30%であるのに対し、「非ヘム鉄」は約2~5%です。
「非ヘム鉄」は、果物や緑黄色野菜に含まれるビタミンCや、肉や魚に含まれるたんぱく質と一緒に摂ると吸収がよくなります。
また、レモンや酢、梅干しなど酸っぱいものと合わせると、栄養分の吸収が促進されるため、鉄の吸収率がアップします。
「ヘム鉄」「非ヘム鉄」どちらかに偏らず、両者をバランスよく食べることが鉄を多く摂るポイントなので、さまざまな食材を組み合わせるとよいでしょう。
【鉄の吸収を抑制する物質】
米ぬかや玄米、ライ麦などに含まれるフィチン酸、コーヒーや緑茶、紅茶に含まれるタンニン、ほうれん草などに含まれるシュウ酸などは、非ヘム鉄の吸収を妨げます。
コーヒーや緑茶、紅茶を飲むときは、食事と時間をずらして飲むとよいでしょう。
【鉄の損失量】
人はそれぞれ体の代謝によって、成人男性では約1mg、女性では約0.8mgの鉄が1日に損失しています。
また女性の場合は月経により、一日あたりに換算してさらに0.5mgの鉄が損失しているそうです。
その損失する鉄を食品から補う必要があります。
その鉄の損失量と吸収率を考慮して、日本人成人(20~49歳)が一日の食事から摂取する量は以下の通りです。
<鉄の一日の摂取推奨量>
男性 7.5mg/1日
女性(月経なし)6.5mg/1日、(月経あり)10.5mg/1日
※厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2020年版)より抜粋
妊婦中はおなかの赤ちゃんの成長を支えるため、血液量が増加します。
そのため上記の量に加え、妊娠初期(+2.5mg/1日)、中期・後期(+9.5mg/1日)、授乳婦(+2.5mg/1日)の付加量が推奨されています。
妊娠中は鉄不足から貧血になる妊婦さんも多いようです。
あまりにも体内の鉄の量が少ないと鉄剤を処方される場合があります。
妊娠中は特に鉄を多く摂取するように心がけ、できれば毎食一品、鉄が摂れる献立をとり入れるとよいでしょう。
鉄は摂りだめできないため、三食きちんと食べて補給したいですね。
また、一度に多くは食べられませんが、青のりや削り節、きな粉、ごま、アーモンド、レーズンにも鉄は多く含まれています。
お浸しや、サラダ、和え物など、合いそうなおかずにちょっと加えてみるのもよいかもしれませんね。
いかがでしたか。
妊娠中は自分のことだけでなく、赤ちゃんの健康にも気をつけなければならないため、大変ですよね。
あまり気負わず、普段の食事を意識することからはじめてみましょう♪
Text byくまこ/食育インストラクター