食物アレルギー②~これってOK?必要最小限の除去~

誰でもなる可能性がある食物アレルギーについて、シリーズでお届けします。
前回はアレルギーの起こるメカニズムや国で指定されている食品についてご紹介しました。
それを踏まえて2回目は、食物アレルギーの症状が出た場合、「正しい診断に基づいた必要最小限の原因食物の除去」についてお伝えします。

「食物アレルギーかな?」と思ったら、まずは専門医の診療を受けましょう。
専門医の正しい診断をもとに、適切に必要最小限の除去を行いましょう。

【必要最小限の除去とは?】

①食べると症状が誘発される食物だけを除去する
②原因食物でも、症状が誘発されない「食べられる範囲」までは食べることができる

「念のため」、「心配だから」といって、必要以上に除去する食物を増やしては×
食物除去はアレルギー誘発を避けるだけでなく、治療の一環でもあります。
食物除去は最小限にとどめ、食べられる範囲までは積極的に食べる
ようにすることが望ましいと考えられます。

【原材料に小麦、大豆、ごま…これってOK?調味料のアレルゲンは?】

原因食物を含むしょうゆやみそなどの調味料や油は摂取できる?と悩んでいる方も多いのではないでしょうか?
しょうゆやみそは、発酵することでたんぱく質が分解され、アレルゲンが低下することがわかっています。
また、大豆油やごま油、穀物酢などの調味料については、たんぱく質(アレルゲン)はほぼ含まれていません。

【小麦アレルギーの場合】

《しょうゆ》
しょうゆに含まれる小麦はしょうゆの醸造過程でアレルゲンが消失しているため、基本的に除去する必要はありません。

《穀物酢》
原材料の小麦のアレルゲン(たんぱく質)はほぼ含まれていないため、基本的に除去する必要はありません。

【大豆アレルギーの場合】

《しょうゆ、みそ》
しょうゆ、みそは醸造過程で大豆アレルゲンはかなり低下しているため、摂取可能なことが多いです。

《大豆油》
原材料の大豆のアレルゲン(たんぱく質)はほぼ含まれていないため、基本的に除去する必要はありません。

【ごまアレルギーの場合】

《ごま油》
精製度の高いごま油には、ごまのアレルゲン(たんぱく質)はほぼ含まれていないため、摂取可能な場合が多いです。
除去の必要性は主治医に相談してください。

調味料に含まれているアレルゲンの量であれば、摂取しても大丈夫な方が多いですが、必ずしもそうとは限らないため、食物経口負荷試験※などで、摂取可能かどうか確認すると安心です。

(※)食物経口負荷試験とは?
・アレルギーが確定しているか疑わしい食品を単回または複数回に分割して摂取させ、症状の有無を確認する検査
・①原因食物の確定診断、②安全に摂取できる量の決定または耐性獲得の診断のために行う
(「厚生労働科学研究班による食物アレルギーの栄養食事指導の手引き」抜粋)

アレルギーの原因となるものは、基本的に食品に含まれるたんぱく質です。
加熱することでたんぱく質が変性し、アレルゲンが低減するものがあります。
食物除去が解除されたときの参考にしてみてください。


【調理によるアレルゲン性の変化】

鶏卵のたんぱく質(アレルゲンとなるもの)は、加熱することによりアレルゲンが低減します!!
が、「加熱卵」は料理に含まれる量、加熱温度や加熱時間によってアレルゲン性が異なります。
例えば、卵をつなぎとして使ったハンバーグは、フライパンで短時間で焼くよりも、じっくり長時間煮込んだハンバーグの方が、卵のアレルゲンは低くなります。
また、牛乳や小麦のアレルゲンは鶏卵のたんぱく質のようには変化せず、加熱による影響をあまり受けません。

【食物除去によって栄養が偏らないようにするためには?】

主食・主菜・副菜を組み合わせ、バランスよく十分に栄養を摂ることが大切です。
例えば、牛乳アレルギーはカルシウム不足、魚アレルギーはビタミンD不足など特定の栄養素が不足しやすくなります。
それらを補うために、牛乳除去はアレルギー用ミルク、小魚や青菜、海藻などカルシウムの多い食品を、魚アレルギーはきのこ類を積極的に摂るよう心がけましょう。
また、原因食物不使用の加工食品や調味料もたくさんあるので、上手に利用して調理法や味つけ、食べ方を工夫して料理の幅を広げましょう。

いつかなるかもしれないアレルギー。
今は不要でもいつか必要になるときのために、日ごろからいろいろとチェックしてみて下さい。

Text by くまこ/食育インストラクター