プルプル食感と濃厚な舌触りが特徴の牡蠣。生でも加熱してもおいしく、人気の貝のひとつです。
今回は牡蠣についてのお話です。
【牡蠣とはどんな貝?】
牡蠣は二枚貝の一種で、主に海水の中に生息するプランクトンを食べています。
海水とともにプランクトンを飲みこみながら食べ、あまった海水は放出しているので、海のお掃除をしていると言われることがあります。
世界では多くの海域で牡蠣の生息が確認されています。
海水温が高い場所を好まず、赤道に近い海域には生息していませんが、それ以外の沿岸地域では牡蠣をよく食べています。
生食を嫌う食文化のある地域でも牡蠣だけは生食することがあり、例外的な立ち位置の食品です。
日本でも古くから牡蠣を食べています。
縄文・弥生時代の貝塚からは牡蠣の痕跡が見つかっていて、古代から天然物の牡蠣を獲って食べていました。
そして、今から400年以上前、室町時代の末期ころに入ると、いよいよ牡蠣の養殖が始まります。
養殖は現在の広島湾のあたりで行われ、それからずっとこの地域に根づき、今でも毎年多くの牡蠣を出荷しています。
広島県の牡蠣の生産量は日本で生産される牡蠣の6割近くを占め、県を代表する食品のひとつといえるでしょう。
ちなみに、日本で生牡蠣を食べるようになったのは洋食が流入した近代になってからのことです。
西洋とは逆に、魚介類を生食する文化のある日本で牡蠣を生食していなかったのは大変興味深いですね。
【牡蠣の旬は冬…?】
多くの国や地域で食べられている牡蠣。
しかし、一言で牡蠣といっても多くの種類があり、旬の時期はさまざまです。
西洋では「Rのつかない月は牡蠣を食べるな」と言われています。
アルファベット表記でRのつかない月である5~8月の時期は、牡蠣が産卵期を迎え、実がやせ細っていておいしくないことから生まれた言葉です。
日本でも「花見過ぎたら牡蠣食うな」という類似の言葉があるので、北半球での牡蠣の産卵期はおおむね同じ時期だと考えてよいでしょう。
実際、日本で多く養殖・流通される真牡蠣は、10月から3月ぐらいまでが旬です。
特に産卵期に向けて身を太らせる2月から3月ぐらいが最もおいしいと言われます。
真牡蠣は粒がやや小ぶりですが、濃厚でクリーミーな味わいが特徴です。
養殖が多く、品質・衛生管理が徹底できるので、生食用としても流通しています。
しかし、実は6月ぐらいから旬を迎える種類の牡蠣も存在しています。
なかでもよく食べられているのが岩牡蠣で、海水温の関係で地域ごとにズレはあるものの、天然ものはおおむね初夏から水揚げされます。
また、岩牡蠣も養殖が行われていて、真牡蠣の旬から外れた時期に旬を迎えるので、日本では1年を通しておいしい牡蠣が食べられる環境が整っています。
【牡蠣と栄養】
牡蠣は海のミルクと呼ばれるほど豊富な栄養があります。
注目したいのは、骨や歯の健康を維持するカルシウムや、代謝に関わる亜鉛・貧血を予防する鉄などのミネラルを多く含むことです。
特にカルシウムや鉄は日本人に不足しがちなので、積極的に摂りたい栄養素です。
そして、造血のビタミンと呼ばれるビタミンB12も豊富です。
また、貝の仲間なので高たんぱく・低脂肪でヘルシー。
さらに、貝類に豊富なタウリンを含むので、コレステロール値の安定に働くのも嬉しいポイント。
減量中の方や、生活習慣病が気になる方でも食べやすい食品です。
産卵前の今の時期は、真牡蠣が最もおいしくなります。
プリプリでクリーミーな身は、生でも加熱してもおいしく食べられるので、一番おいしい時期を逃さず、ぜひ召し上がって下さいませ☆
Text by はむこ/食育インストラクター