前回は油脂だけがニキビや肌荒れの原因ではないとお伝えしましたが、今回は油脂が体の中でどんな働きをしているのかについてのお話です。
読めば「油なんてぜい肉のもと」、なんて考え方はできなくなるかも…!?
【意外なところで大活躍!?】
前回は油脂が肌を乾燥から守るバリアの役目をしている点について触れました。
肌の乾燥は目に見えたり、触れてわかる部分なので、気になりますね。
しかし、実は見えないところでも、油脂は肌の状態に関わっています。
それは、油脂が排便を促しているという点です。
より正確には、便が腸の中を進むための潤滑剤としての機能があるのです。
尾籠な話で恐縮ですが、排便は腸内の老廃物を排出するために必要不可欠な生理現象です。
もし、排便ができなくなったら、老廃物が体の中にたまり続け、やがて命にも関わる事態を引き起こすほどです。
たかが便秘と気軽に言えません。
この腸内の老廃物は、肌トラブルの大きな原因にもなります。
便秘になったことのある方は、同時に肌の調子も悪くなったことがあるのではないでしょうか?
これは、少しでも老廃物を排出しようとするため、汗や皮脂に老廃物が混ざるようになるからです。
この時は肌の調子だけではなく、体臭もきつくなるので、便秘はまさに美の大敵といえるでしょう。
一般的な食生活を送っている分には、便秘になるほどの油脂不足になることはありませんが、ダイエットやトレーニング目的で過度に油脂を制限している方は要注意です。
なお、炭水化物も排便に関わる栄養素です。
脂質を増やすならその分だけ炭水化物を減らさなきゃ!というような、自己流の間違った食事制限は控えていただきたいところです。
健康や美のために頑張っているはずなのに、余計な肌トラブルや便秘に悩まされるなんてあんまりですからね。
【どれだけ食べたらよいの?】
前回は体に必須脂肪酸が必要なこと、必須脂肪酸は植物性油脂や、動物性油脂の中では青魚に多いことなどをお話しました。
では、どの程度の量を食べたらよいのでしょうか?
厚生労働省が指針として提示しているPFCバランスでは、一日で脂質からとるエネルギーは、全体の20~30%ぐらいまでが望ましいとしています。
例として成人女性で考えると、平均的な摂取エネルギーは1日当たり2000kcal程度とされています(※体格・運動量によって大きく異なります)。
これを参考にすると、脂質は1日400~600kcalほど、グラム換算で44~67g程度で、一食あたり大体15~22gぐらいですね。
一食で油を15g以上摂ることは(揚げ物でもなければ)あまり無いと思うかもしれませんが、この脂質とは主菜の肉や魚などの脂肪分も含まれます。
例えば、不飽和脂肪酸の多いさんまは、一尾あたり25.1g(七訂食品成分表より参照)ほどの脂質を含むので、これだけで一食分を軽々オーバーしています。
いくら体によい油といっても食べ過ぎは禁物なので、さんまを食べた日は、ほかの食事で脂質を控えるなど、工夫した方がよいことがわかります。
体によい油を含む食品でも、一日に一食だけ食べれば十分なものも多いのですね。
油脂は人間にとって、切っても切り離せないほど大切な栄養素。
それだけに、肌の調子が気になるときは、とり方や内容に注目しておきたいところです。
美肌を目指す方は、むやみに脂質を制限するのではなく、その働きへの理解を深めていただくと、よりよい効果が得られますよ☆
Text byはむこ/食育インストラクター