和の食材としてイメージされるこんにゃく。
ローカロリーフードとして、世界でも注目を集めています。
しかし、意外とその作り方や栽培については知られていません。
今回はそんなこんにゃくのお話です。
【芋なのに手間暇がかかる!?】
こんにゃくの原材料がこんにゃく芋であることは、広く知られていると思います。
でも、栽培されているこんにゃく芋を実際に見たことがあるという方は、少ないのではありませんか?
園芸店でも、家庭菜園用にじゃが芋やさつま芋の苗や種芋を販売していることはあっても、こんにゃく芋を見かけることは珍しいですよね。
それもそのはず、こんにゃく芋はほかの芋類と比べると圧倒的に育てにくい、素人お断り(!?)な作物なのです。
芋類というと痩せた土地でも収穫でき、世界中で食糧危機から人々を救った救荒作物…。
そんなイメージが強いですが、こんにゃく芋はその特徴にまったくあてはまりません。
まず、こんにゃくの原料になることからわかるように、カロリーがほとんどありません。
そして、非常にデリケートで、寒冷地では育たず、多湿にも乾燥にも弱い。
葉に傷がついただけでも病気にかかる原因になる…。
数々の苦労の末、植えてから収穫までにかかる時間は最低でも3年!
そして連作障害が起こりやすいので、同じ畑で続けて栽培できない…。
これだけ厳しい条件があると、食糧危機に直面しているときに植えるべき作物ではないことがわかりますね。
【いざ収穫!したけれど…】
収穫したからといって、そのまま料理すると大変なことになるのが、こんにゃく芋の特徴です。
山芋を素手でさわるとかゆくなることがありますが、その症状を引き起こしているシュウ酸カルシウムという成分があります。
こんにゃく芋は長芋の比ではないくらい多量のシュウ酸カルシウムが含まれているので、素手でさわるとひどいかぶれを起こす可能性があり、危険です。
その情報だけ見ると、本当に食べ物なのか疑問に思えてしまいますね(当然ながら、こんにゃく芋をそのまま食べると健康被害をもたらす危険性があります)。
そんな、刺激物の塊であるこんにゃく芋を、食べられるように加工したものがこんにゃくなのです。
普段何気なく購入しているこんにゃくですが、その裏には多大な努力と時間がかかっていると考えると、ちょっと特別に感じますね☆
【実は着色してる疑惑!?】
こんにゃくと聞いて想像するのは、灰色がかって黒っぽい粒がたくさん入ったものではないかと思います。
実は現代のこんにゃくは、ひと手間をかけてわざわざあの色にして作られているのです!?
昔ながらのこんにゃくは、こんにゃく芋をつぶしたときに出た皮や、シュウ酸カルシウムを中和するために灰汁(草木灰の上澄み液)と一緒に煮るため、自然と黒っぽくなっていました。
その後、こんにゃく芋を乾燥させて作るこんにゃく粉と、灰汁の代わりとなる水酸化カルシウムが流通するようになると、不純物を入れない白いこんにゃくが作られるようになります。
ところが、それまでの黒~灰色っぽい色のこんにゃくに慣れ親しんだ人にとって、白いこんにゃくは受け入れがたい存在だったようで、販売してもあまり売れなかったようです。
結局、海藻の粉末などを添加して、元の色合いに近づけたこんにゃくを販売し、それが今日まで店頭に並んでいるのですね。
逆に、気候の関係でこんにゃく芋が栽培できなかった東北地方では、白いこんにゃくが避けられることは少なかったようで、山形県では特産品の玉こんにゃくになるまで躍進しています☆
カロリーが少ないこんにゃくは、食べ過ぎが気になる現代の食生活にこそ活用したい食品です。
また、食物繊維が豊富なので腸内環境を整える手助けをしてくれるので、巣ごもりでお腹まわりが気になってきたときにおすすめですよ☆。
こんにゃくは語呂合わせで529となることから、5月29日がこんにゃくの日として定められました。
手間暇かけてつくられたこんにゃくを、ぜひ召し上がってみてはいかがでしょう?
Text byはむこ/食育インストラクター