正しい味覚を身につけるには、「8~12歳までが勝負」と言われています。
その理由は?
そもそも「味覚」とは?
【味覚】
味覚とは『甘味』『酸味』『塩味』『苦味』『うま味』の5つの基本味からなります。
味覚を感知するのは味蕾(みらい)で、新生児は味に対する反応が強く、味蕾の数は成人の1.3倍あります。
ということは、子どもは成人より味に対してとっても敏感!
人間は本能的に甘味・うま味・塩味を好みますが、これは母乳の味に関係しています。
母乳の中の甘味は炭水化物でエネルギーに変換され、うま味はたんぱく質の中のアミノ酸で筋肉や体液に、塩味は塩分(ナトリウム)で血液をはじめとした体液に含まれています。
また、母乳は濃い味ではないので、卒乳後の低年齢時期から濃い味を覚えてしまうと奥深い味覚の発達を阻害します。
そのため、離乳食を卒業したころから12歳くらいまでの食生活はとても重要で、生涯に関わってきます。
この時期に脳や運動機能も非常に発達するので、おいしくてバランスのよい食事をすることは、健康な体と精神の安定を得ることができるのです。
【そこで気をつけたいことは「味付け」!】
加工食品の摂りすぎのほかに、塩分の摂りすぎにも注意しましょう。
塩分の多い食事は、血圧上昇につながるばかりでなく、食べすぎにもつながります。
味付けはできるだけ薄味にし、新鮮な素材を選び、素材が持つ本来の「うま味」を味わい、味覚の幅を広げることが大切です。
はじめは物足りなく感じるかもしれませんが、続けることで風味や微妙な味の違いを楽しめるようになります。
そうすることで舌が鍛えられ、味覚に磨きがかかります。
【味覚の発達に大切なポイント】
①薄味を心がける
材料は旬の新鮮なものを選び、素材そのものが持つ「うま味」を味わうことが大切。
出汁をきかせて調理すると、出汁のうま味によって調味料に頼らなくても味を感じやすくなります。
またサンマの塩焼きなどは塩を減らして焼き、焼きあがりにレモンなどの酸味をふることでしっかりした味付けを感じることができます。
出汁のうま味と酢やかんきつ類などの酸味が素材の「うま味」を引き出し、薄味でもおいしくしてくれます。
② 唾液が出るようによく噛んで食べる
「お米は噛めば噛むほど甘くなる」と聞いたことはありませんか?
味覚を育てるために必要なのは、そう「よく噛むこと」です。
よく噛むことで唾液がたくさん出て、唾液を介して味を感じます。
味を感知する味蕾は舌だけでなく上あごやのどにもあるのでよく噛んで、口の中全体で味わうとおいしさが何倍も広がります。
③口の中をきれいに保つ
口の中にはもともと雑菌(細菌)が存在します。
歯磨きやうがいで口やのどをきれいに保つことで味覚を感じやすくし、食べ物の微妙な味がわかるようになります。
④一緒に調理する
包丁を持たせるのがまだ怖いというお子さんには、レタスを手でちぎらせたり、ピーラーで皮をむかせたりするとよいですよ。
それだけでも、自分たちが調理にかかわった料理は、「おいしいね」と言ってよく食べてくれると思います。
同じものを味わって「共感」することは喜びにつながります。
喜びは「おいしさ」を記憶させ、食べる楽しみにもつながりますね。
そうすると食に対して興味がどんどん沸いてくるのかも?
⑤亜鉛を摂る
ファーストフードやインスタント食品などの加工食品には、亜鉛の吸収を妨げるリン酸塩などの食品添加物が含まれているため、加工食品ばかり食べていると亜鉛不足に陥ります。
亜鉛は味覚を正常に保つ働きや骨・皮膚の発育を促進する栄養素で、不足すると味覚障害や成長期の子どもでは成長不良を起こします。
通常の食生活で摂りすぎる心配はほとんどありません。
亜鉛が多く含まれている食品は、牡蠣・かに・豚レバー・牛肉などです。
意識して摂るようにしましょう。
【味覚だけではない!?おいしいと感じる感覚】
おいしいと感じる感覚は「味覚」だけではありません。
盛り付け、歯ごたえ、香り、舌触りなど五感が複合的に作用して感じるものなので、五感を養うことも大切です。
五感が刺激されることで、子どもの感受性が養われ、また脳も活性化します。
人間にとって味覚を成長させることはとっても大切なことです。
まずは加工食品の利用頻度を見直し、薄味に慣れること。
これが正しい味覚、健康にもつながります。
子どもに食べ物を与えているのは私たち親。
子どもの味覚を育てるのは親次第!
できることから実践していきたいですね。
Text by くまこ/食育インストラクター