鮎は、鮭や鱒のように、海と川とを旅しながら生きる魚です。
食味のよさから日本の清流を代表する魚として古来から愛されてきました。
古来というのも、なんと「古事記」(712年)では、
「年魚」という漢字で鮎が書かれているそうです!
その「年魚」といわれた、鮎の一生からご紹介したいと思います。
【鮎の一生】
(秋)
川の中流と下流の境目あたりで、アユの一生は始まります。
川底の砂利の隙間にある、小さな卵から生まれた幼魚は、
川の流れに乗って、海に下ります。
(冬)
海岸近くの浅い場所で過ごします。
春が来るまでの数か月間は、動物プランクトンを食べて成長します。
幼魚はエサを取り易いように、歯は尖って突き出ています。
この時期はシラウオのような透明の体をしています。
(春~夏)
川の水が海と同じくらいの温かさになると、川をのぼり始めます。
群れをなして帯状になって川を遡上し、川の中流域に住み着きます。
鮎の尖って居た歯は退化して、平らなくし状の歯に変わります。
食性が変わり、川底の石についたコケを主食にするようになります。
この時期になると、群れから離れて、縄張りを作るように成ります。
一日に自分の体重の約半分ほどのコケを食べるほど、食欲も旺盛になります。
(秋)
昼間の時間が短くなり、水温が低下してくると、
鮎は再び川を下り、下流付近までやって来て、卵を産みつけます。
産卵を終えると、わずか一年の短い一生を終えます。
産卵に全エネルギーを使った鮎は「年魚」の名の通り、一年で生涯を閉じます。
鮎の一生は実にはかないですね。
【鮎の習性をいかした友釣り】
緩やかな流れの浅場で群れをなしていた鮎も、コケを食べるようになると、
少しずつ群れから離れて一か所に定住し始め、縄張りを作るようになります。
縄張りの中に侵入して来たものに対して、
猛烈な勢いで体当たりして追い払い、必死に縄張りを守ります。
その習性を利用して、生きたおとりの鮎を投げ入れて、鮎を釣り上げます。
この技法を「友釣り」といいます。
直径10mmほどの小さな輪っかを、おとりの鮎の鼻穴に通し、
そこから掛け針を尻びれの後ろに来るようにセットします。
追いにきた鮎が掛け針に引っ掛かって釣れるという仕組みです。
【スルっと骨が抜ける塩焼き】
鮎の塩焼きは、夏の訪れを知らせてくれます。
その塩焼きを、一気にスルッと骨を抜いて食べやすくする方法があります。
まず、背びれと尾びれをはずし、箸で身の部分を押さえてほぐします。
頭と胴の部分を、中骨が切れないように離し、頭を持って、ゆっくりと引き出すと、
骨がスルっと抜けるのです!
【選び方と保存法】
頭が小さく、体の色がきれいで、目が澄んでいるものを選びます。
鮮度の良いものはツヤとぬめりがあり、黄色の斑点が鮮やかで、
身が光っているものがおいしいとされます。
うろことぬめりを取り、ペーパータオルで包んでラップし、チルド室で保存します。
傷みやすいのですぐに食べましょう。
【天然と養殖のちがい】
(天然)
石についているコケを削りとって食べるので、前歯が発達して、口がとがっています。
黄色味をおび、しっとりとしていて、お腹にハリがあります。
(養殖)
口は丸く、体色はやや黒っぽい色をしています。
天然ものよりひと回り大きく、ずんぐりした体形です。
小さいころに、川遊びに出かけ、鮎のつかみどりをした記憶が、
今でも鮮明に残っています。
夏休みに、鮎の塩焼きを食べるのも楽しみのひとつでした。
生きている鮎は、スイカやきゅうりの香りがすることも驚きです。
夏にしか食べられない「鮎」を、ぜひとも味わってみてはいかがでしょうか?
Text by ナナちゃん/食育インストラクター